2019年9月掲載

救急車を上手に利用するために

救急看護認定看護師 伊藤 奈保美

9/9は救急の日です

  • 救急車を上手に利用するために
  • 救急の日は「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせから、救急医療関係者の意識を高めるとともに救急医療や救急業務に対する国民の正しい理解と認識を深める事を目的として、昭和57年に厚生労働省によって定められました。

皆さんは救急車を呼んだことがありますか? どんな時に救急車を呼ぼうと思うのでしょうか。もちろん、すぐに病院に受診したい状況であるに違いありません。具合が悪い時には誰でも不安でいっぱいです。しかし救急車の台数は限られています。では私たちは必要な時に救急車を利用するためにどんな選択をしたら良いのでしょう。少し考えてみたいと思います。

県内救急搬送の状況

「約1分7秒に1回」これは神奈川県内で救急車が出動している回数です。平成29年度の救急車出動件数は469,432件で、前年より2.3%増加しています。川崎市でも平成30年度の出動件数が7万件を超え、過去最多となっています。

では、救急車を利用するのにかかる費用について考えてみましょう。 日本では救急車は行政サービスの一環であり、救急隊の人件費や救急車のガソリン代、メンテナンス代、救急車内に設置されている医療機器や物品の費用は全て自治体の税金が使われているので、無料です。(ちなみに救急車が1回出動するとおよそ4万5千円がかかるといわれています。海外では有料な国もあり、例えばニューヨークでは基本料金が5万円、カナダのバンクーバーでは6万円など、決して安くはない料金が請求されます)救急車を利用する人が増加することでサービスの負担も増していることから、近年において財務省より年間で2兆円にのぼる消防関連費の抑制を図る目的で、救急車を利用し軽傷だった患者に料金負担を求める具体策の提案や、救急車の有料化も検討されています。しかし、それらの対策や救急車の有料化にも賛否両論あり、なかなか難しい問題であるといえます。

この機会に、緊急時に相談できる医療機関やサービスの連絡先などをすぐわかるところに張り出しておいたり、家族で緊急時の対応について話し合う時間を設けるのも良いかもしれません。また、万が一に備えAEDの設置場所や心肺蘇生法などについて再確認しておくことも大切です。

これから涼しくなってアウトドアなどの機会が増えると思わぬけがをしてしまうこともあるのではないでしょうか。そんな時、応急処置も知っていると心強いですね。
では、よくあるけがの応急処置についてご紹介します。

擦り傷・切り傷

まず、傷口を清潔な水で洗浄し、砂やゴミなどの異物を取り除きます。傷口がきれいになったら、絆創膏等で保護してあげましょう。ガーゼが直接傷に触れるタイプのものは、傷口に細かい繊維が残ってしまいますので、できれば避けて下さい。出血している時には患部を直接圧迫することで9割以上の出血を止める事ができます。5分〜15分間押さえ続けます。(途中、傷を覗きたくなる気持ちを抑えて!)手や足の場合は患部を心臓より高い位置にして圧迫すると効果的です。頭部や顔面は血行がよいので、切ると出血が多いように感じますが、直接圧迫法で殆どの場合、止血が可能です。あわてずに対応しましょう。 下記のような場合には医療機関での専門的な治療が必要な場合があるため、早めに受診することをお勧めします。

・大きな傷やなかなか血が止まらないような深い傷
・骨や腱のような組織が露出している傷
・化膿している傷(膿が出ている、赤く腫れて熱を持っている、など)
・猫や犬などに噛まれた傷
・切り傷の原因になったもの(刃物など)が汚れていた場合