広報紙 vol.32しんゆりニュースレター

「皮膚は心の鏡」
皮膚病変を正しく診断し、
適切な治療を

新百合ヶ丘総合病院
皮膚疾患研究所 所長
いいじま まさふみ
飯島 正文 医師
【プロフィール】
1973年東京大学医学部卒業/東京大学医学部皮膚科学教室入局。80年NIH(米国立衛生研究所)留学。83年東京大学講師。85年昭和大学医学部皮膚科助教授。95年昭和大学医学部皮膚科教授。2012年昭和大学名誉教授/新百合ヶ丘総合病院皮膚疾患研究所所長。
日本皮膚科学会専門医

2000~2010年日本医師会疑義解釈委員会委員/03~12年厚生労働省医療技術参与(医療指導監査室顧問)/04~11年昭和大学病院長/09~16年厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 副作用・感染等被害判定部会長/10~12年(社)日本皮膚科学会理事長

「皮膚は心の鏡」
皮膚病変を正しく診断し、
適切な治療を

新百合ヶ丘総合病院
皮膚疾患研究所 所長
いいじま まさふみ
飯島 正文 医師
【プロフィール】
1973年東京大学医学部卒業/東京大学医学部皮膚科学教室入局。80年NIH(米国立衛生研究所)留学。83年東京大学講師。85年昭和大学医学部皮膚科助教授。95年昭和大学医学部皮膚科教授。2012年昭和大学名誉教授/新百合ヶ丘総合病院皮膚疾患研究所所長。
日本皮膚科学会専門医

2000~2010年日本医師会疑義解釈委員会委員/03~12年厚生労働省医療技術参与(医療指導監査室顧問)/04~11年昭和大学病院長/09~16年厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 副作用・感染等被害判定部会長/10~12年(社)日本皮膚科学会理事長
  • 皮膚科診療責任者の飯島正文です。私は2012年昭和大学皮膚科教授を退任後、渡邉一夫理事長が主宰する南東北グループの一員に加わり、本院開院前からグループが首都圏に展開する総合東京病院(中野区江古田:水曜日)と東京クリニック(新大手町ビル:木曜日)の皮膚科診療を兼担していました。そのため新百合ヶ丘総合病院開院に際して皮膚科は、私が月曜日と金曜日、その他の曜日は昭和大学皮膚科関係者が非常勤医として診療を担当する形でスタートしました。現在では昭和大学に加え、東京大学、慶應義塾大学からの非常勤医が加わり、また皮膚科専攻医の窪田茶月先生が常勤医として活躍する現在の皮膚科診療体制になっています。

    開院直後から多くの患者さんが来院され、我々の目標とする丁寧な皮膚科診療を目指すと長い待ち時間となり、ご迷惑をかけております。皮膚科専門医の数は人口10万人当たり約6名が全国平均ですが、川崎市北部・東京都多摩地区はその半分程度、皮膚科専門医の診療所は患者さんで溢れ、また専門医以外の先生に診療を委ねる皮膚科患者さんも相当数に上ります。診療所の先生方との医療連携(病診連携)を大切にした、また同時に特定機能病院との病々連

  • 携も視野に入れた新百合ヶ丘総合病院皮膚科診療を目指したいと思います。

    皮膚病は患者さん自身が目で症状を見ることができ、また痒みや痛みを自覚できるので自己診断は容易だと思っている方が多いのではないでしょうか。しかし実際には同じように見える皮膚症状も原因と診断、治療法は実に様々、時には間違った治療で逆に悪化させることも多いのです。皮膚病変を正しく診断し、病態の理解と適切な治療法を指導することが皮膚科専門医のつとめです。肉眼で見て診断がつかない時には病変の一部を採取して標本を作製し、顕微鏡で細胞を調べる病理組織学的検査が有用です。診断に迷う場合や皮膚がんの疑いのある場合など、病理組織学的診断は我々皮膚科専門医の得意技で、病理担当者にも意見を求めます。病理組織の顕微鏡所見を一緒に見ながら結果を説明することにしており、患者さんには好評です。

    「皮膚は内臓の鏡」とよくいわれますが、実際には「皮膚は心の鏡」のことが多いのです。心理的ストレスに伴った嗜癖的掻破行動による「掻くのがやめられない症候群」の患者さんが最近目立ちます。常識では説明のつかない痒みなどは、遠慮なくご相談ください。

皮膚疾患治療 最新のトピックス 3題

受診の際は、必ずご予約をお取りの上、ご来院ください。
【予約電話番号:0800-800-6456(9:00~17:00)】 ※月~土(日・祝日除く)

掻くのがやめられない症候群(嗜癖的掻破行動に基づく人工皮膚炎)のはなし

掻くのがやめられない症候群

止痒剤は抗ヒスタミン薬(抗ヒ薬)です。抗ヒ薬はじんましんなどの痒みには有効ですが、痒み神経の関与する痒みなどには殆ど無効です。掻き過ぎ/掻き壊しは皮膚を損傷して炎症を重症化させ、抗ヒ薬が無効な痒みをさらに悪化させ、またまた掻き壊す、掻くのがやめられないというitch-scratch cycle(掻痒/掻破の悪循環)を惹き起こします。

全身に無数の掻破痕・結節性痒疹(掻いてできた硬いしこり)を主訴に来院される患者さんは少なくありません。何処の医者に行っても治らない、そもそも医者はろくに話も聞かずに薬だけ処方する、掻くのが良くないと頭では分かってはいるが掻くのがやめられない、と訴えます。治療には抗ヒ薬の効かない痒みの病態(itch-scratch cycle)を良く説明し、心理的ストレスが嗜癖的掻破行動の背景にあることを理解してもらいます。掻いても傷にならない爪切り、クーリングによる痒み抑制などの生活指導をします。診察には時間がかかりますが、患者さんとの信頼関係の確立こそが本症候群治療の決め手と考えます。

重症成人アトピー性皮膚炎の新しい治療戦略

重症成人アトピー性皮膚炎の新しい治療戦略

アトピー性皮膚炎は先天的・遺伝的な乾燥肌/過敏肌(=アトピー皮膚)に生じた湿疹・皮膚炎で、乳幼児、小児、成人と各年齢層に特徴的な皮膚症状が認められます。皮膚炎に対しては主としてステロイド軟膏を用いた外用治療を行い、皮膚炎軽快後は乾燥したアトピー皮膚に対する保湿剤を用いたスキンケアを最終目標とします。しかし実際の臨床では患者さんが掻痒/掻破の悪循環に陥って治療に難渋させられることが多く、最近では治療抵抗性の重症成人アトピー性皮膚炎の患者さんが数多く来院されます。

免疫抑制薬ネオーラルはインターロイキン2(IL-2)を中心とするアトピー性皮膚炎の免疫応答と神経由来の痒みを抑制して重症アトピー性皮膚炎に高い治療効果を発揮します。当院は既存治療に抵抗する成人(16歳以上)の重症アトピー性皮膚炎に対してネオーラル内服療法を積極的に用いており、投与開始後比較的速やかに掻痒の改善が期待できます。内服期間は8~12週間、高血圧・腎機能障害に配慮し、休薬期間を挟んだ間歇投与を原則とします。このようにネオーラル内服療法は成人アトピー性皮膚炎に対する優れた治療法ですが、このネオーラル治療にも抵抗性の最重症型の患者さんがなお散見されます。

2018年重症成人アトピー性皮膚炎に対する画期的な新薬、デュピクセントが保険収載され、卓越した有効性を実感しています。本剤はアトピー性皮膚炎の根幹を形成するインターロイキン4/13(IL-4/IL-13)阻害薬で2週間ごとに皮下注射します。治療開始後間もなくから強い痒みが緩和されて患者さんの大きな福音となりますが、相当に高額な薬剤費が問題です。重篤な副作用はなく、費用対効果を勘案した有用性は大きいものと考えます。今後重症成人アトピー性皮膚炎には従来のネオーラル内服療法に加え、デュピクセント皮下注療法を中心に進めてまいります。

爪白癬(爪水虫)の新しい治療戦略

爪白癬(爪水虫)の新しい治療戦略爪白癬(爪水虫)の新しい治療戦略

爪白癬治療は従来、肝機能障害や併用禁忌薬で問題の多い抗真菌薬内服療法のみで、高齢者に適切な治療法はありませんでした。2014年クレナフィン、2016年ルコナックが発売され、外用薬による爪白癬治療が可能な時代になりました。ただし外用剤治療が有効な爪白癬は表在型、遠位側縁型など比較的軽症~中等症の爪白癬に限られます。2018年爪白癬に対する新規内服抗真菌薬、ネイリンが発売されました。内服は12週間、重篤な肝機能障害は認められず、比較的安心して使用できる薬剤と思われます。本剤は12週間の内服で治癒するわけではなく、内服終了後も定期的な通院で爪病変の経過を観察することが最も重要です。投与48週後の完全治癒率40%、著効率56%で、比較的中等症以上の爪白癬にも効果が期待できます。爪白癬は病型/重症度によって外用治療と内服治療を使い分ける新しい時代になりました。

医療福祉課コラム

回復期リハビリテーション病棟とは

医療福祉課 主任/社会福祉士 嶋﨑 晃


当院では増床に伴い、100床の「回復期リハビリテーション病棟」が開設されます

緩和ケアについて

回復期リハビリテーション病棟は、脳血管疾患または大腿骨頚部(太ももの付け根部分の)骨折などの病気で急性期を脱しても、まだ医学的・社会的・心理的なサポートが必要な患者さんに対して、多くの専門職種がチームを組んで集中的なリハビリテーションを実施し、心身ともに回復した状態で自宅や社会へ戻っていただくことを目的とした病棟です。

これらの患者さんに対し、チームの各担当スタッフが入院後すぐ、寝たきりにならないよう、起きる、食べる、歩く、トイレへ行く、お風呂に入るなど(これらを「日常生活動作」(ADL)といいます)への積極的な働きかけで改善を図り、家庭復帰を支援していきます。

この病棟への入院については、担当の医師や医療ソーシャルワーカーにご相談ください。

疾患 病棟に入院できる期間
1脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症もしくは手術後又は義肢装着訓練を要する状態 150日
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頚髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷 180日
2大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折又は二肢以上の多発骨折の発症後又は手術後 90日
3外科手術又は肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後又は発症後 90日
4大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靱帯損傷後 60日
5股関節又は膝関節の置換術後 90日

資料出展:厚生労働省/回復期リハ病棟入院料を算定可能な疾患(2016年改定・別表9)より一部抜粋
※2020年4月改定予定

2020年4月、
新棟がオープンいたします!

心不全教室

当院は現在377床ですが、4月に新棟の186床(一般病棟45床、回復期リハビリテーション病棟100床、緩和ケア病棟21床、救急専用病棟20床)が増床し、563床となります。

新棟は地下1階/地上5階、延床面積約15,500㎡。ER型救急センター、緩和ケア病棟が整備され、地域医療に今まで以上に貢献できる施設になります。また、回復期リハビリテーション病棟ができるのに伴いリハビリテーション室を2室設置し、リハビリテーション機能が充実します。

今後、広報紙にて新棟の詳細をご紹介する予定です。

2020年1月の救急車受け入れ台数は609台でした。