広報紙 vol.21しんゆりニュースレター

広報紙 vol.20しんゆりニュースレター

腎疾患のすべてのステージにおいて最新・最良の治療を提供する

新百合ヶ丘総合病院 血液浄化療法センター長/腎臓内科部長
しのざき みちや
篠﨑 倫哉 医師
  • 日本透析医学会専門医/日本腎臓学会腎臓専門医
    /日本内科学会総合内科専門医/日本内科学会認定医
    音楽部のコンサート
    音楽部のコンサート
    篠﨑医師には指揮者としての一面もある
  • 【プロフィール】
    1991年九州大学医学部医学科卒業。九州大学第二内科入局、腎臓研究室に配属。95年九州大学大学院医学系研究科内科専攻入学。 99年米国Harvard大学Brigham and Women’s病院腎臓科(Research fellow)。2001年九州大学医学部附属病院腎疾患治療部。06年宗像医師会病院腎センター医長。08年平成紫川会社会保険小倉記念病院腎臓内科副部長。12年財団法人厚生年金事業振興団九州厚生年金病院内科部長。14年4月より現職。15年聖マリアンナ医科大学腎臓高血圧内科非常勤講師。16年山梨大学第3内科非常勤講師。
  • 腎臓の病気は初期症状に乏しく、定期的な検診を受けていないと早期発見が難しい場合が多く見られます。気づいた時には腎機能は不可逆で、その後慢性進行性の経過をたどり、末期腎不全に至ることが多いという厄介な病気です。我々はそのすべての病期に対応しています。検診で見つかった尿異常に対して腎生検などの専門的検査で的確に診断し、最善の治療で治癒を目指し、不可逆となった場合でも様々な増悪因子をコントロールしながら、腎機能低下を阻止することに取り組んでいます。また末期腎不全となられた患者さんにも移植医療・透析療法などすべての選択肢を提示し、患者さんと共に考えて最良の治療を行っています。

    当院の腎臓内科には他院と違ういくつかの特徴があります。まず一つは、診断・治療に関わる手技を我々自身の手で行なっている点です。血液透析のための内シャント造設、人工血管移植などすべてのブラッドアクセス治療および、腹膜透析のカテーテル挿入、カテーテル合併症に対する手術など様々な手術があります。手術に関与しない腎臓内科医の方が国内では多い中、アクセスを実際に使用する我々自身がタイムリーなアクセスの作成、管理に携わるべきという考えのもとで積極的に取り組んでいます。

    次の特徴は腹膜透析患者さんが多いことです。近年

  • の透析液の改良や知見の蓄積によって、腹膜透析を安全に施行できる期間は以前よりも延長しており、残存腎機能を透析期に入っても保持した方が患者さんの生命予後が良いという観点から、腹膜透析を最初に行う「PDファースト」という考え方が普及して、腹膜透析が見直されるようになりました。厚生労働省も在宅医療を推進する方針から、腹膜透析の普及を強く後押しするようになりました。当院でも多くの患者さんに腹膜透析の良い点を享受していただきたいと考えています。

    最後の特徴は、総合病院である利点を活かして他科との連携を強く持っているということです。院内では様々な状況で血液浄化を必要とする事態が発生します。我々は各科の主治医と緊密に連絡を取り合って他科の治療をサポートします。また逆に、我々が診ている腎不全患者さんは多くの合併症を抱えた方が多いため、他科と連携しながら大学病院にも負けない総合的・全人的な治療を提供できるように心がけています。

    一方、院内での別な側面として音楽部の活動があります。様々な職種の職員とその仲間から構成される管弦楽団で、当院STRホールで定期的にコンサートを開催しています。入院中または外来の患者さんに、音楽で癒しと生きる力を感じていただくことを目標にしております。機会があればコンサートにもお気軽にお越しください。

血液浄化療法センターのご案内

外来診療予約(腎臓・透析内科):0800-800-6456(9:00~17:00)※月~土(日・祝日除く)
お問合せ:044-322-9991(代表)

血液浄化療法センタースタッフ

  • 透析患者さんの送迎車
    透析の患者さんの送迎車
  • 血液浄化療法は、病態悪化を食い止め、生命救出に貢献できる画期的な治療法であると同時に、体外循環を必要とするため生命に関わる事故が発生しうる治療法でもあります。当浄化センターでは、病院内で施行されるすべての血液浄化療法に対して責任と権限を持ち、医師、看護師、臨床工学技士が密接な協力のもとにチームとして機能し、慢性腎不全患者さんの 血液透析療法、血液濾過透析療法を中心に、あらゆる血液浄化を必要とする治療に対応すると同時に、安全性、専門性、迅速性を重視し、患者さんにとって最善の医療の提供を常に心がけています。

血液透析導入、維持血液透析以外に、脳神経外科系手術、上皮小体摘出術、心臓血管系手術、消化器外科系手術、整形外科系手術などの周術期の血液透析と、合併症を有する患者さんの治療のための血液透析療法を行っております。 現在、月・水・金、火・木・土のいずれのスケジュールにも対応して透析療法を行っており、日曜日を除いて、土曜日、祭日も通常通り行っています。

また、患者さんの通院の煩わしさを少しでも軽減できるよう、お車での患者さんの送迎も行っております。

対象疾患

急性腎不全、慢性腎不全に対する血液透析療法の他、血液濾過療法や血漿交換療法、血漿吸着療法、血液吸着療法など、血液浄化を必要とする全ての疾患に対応しています。

具体的には膠原病(SLE、関節リウマチ)、血液疾患(多発性骨髄腫、マクログロブリン血症)、神経筋疾患(重症筋無力症、ギランバレー症候群)、腎疾患(急速進行性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症など)、消化器疾患(劇症肝炎、潰瘍性大腸炎、重症急性膵炎)、皮膚疾患(尋常性天疱瘡、類天疱瘡)、敗血症、動脈硬化性閉塞症、薬物中毒など、多岐にわたっております。

診療内容

●血液透析(HD)  ●血液濾過透析(HDF) ※Online HDF、Offline HDFとも対応しています
●アセテートフリーバイオフィルトレーション(AFBF)  ●血漿交換  ●LDL吸着  ●白血球除去
●血漿吸着 ※エンドトキシン吸着を含む  ●持続的緩徐血液濾過透析  ●腹水濾過濃縮

透析について

◆ 月 ・ 水 ・ 金 / 火 ・ 木 ・ 土 (いずれも午前)
◆ 土曜日、祭日も通常通り(日曜日を除く)
◆ 医師、臨床工学技士、看護師は、24時間いつでも、緊急時の血液浄化に対応できるよう、体制を整えています。

薬剤科コラム

不眠症と薬
~不眠症治療のゴールは、薬に頼らずに十分な睡眠を得ること~

薬剤科 黒滝 竜


睡眠とは?

睡眠が人間にとって重要なものであるということは、皆様もご存知かと思います。十分な睡眠がとれなかった日は、やけにイライラしたり、仕事が思うように進まないといった経験をしたことがあるのではないでしょうか? 睡眠には、日中の活動で使った脳と体を休養する役割の他に、記憶の整理・定着、ホルモンバランスの調整などの役割があります。

不眠症とは?

不眠症とは、「夜間の不眠症状が週に2回以上あり、その状態が少なくとも1か月以上持続し、その結果として日中の機能障害を伴うもの」と定義されています。精神的なストレスや身体的な苦痛により一時的に夜間眠れない状態は、生理学的な不眠状態ではありますが、疾患としての「不眠症」とはいいません。成人の約30%が不眠症状を有しており、約10%は不眠症に罹患しているといわれています。不眠は、眠気、倦怠感、集中力低下、抑うつや不安などの精神症状を引き起こし、その結果として医療費の増加、生産性の低下、交通事故の増加など、さまざまな人的及び社会経済的損失をもたらすことが報告され、社会問題となっています。

不眠症状のタイプ

不眠症状には大きく分けて4つのタイプがあります。症状が単独ではなく組み合わさっている場合もあります。

入眠障害 床に入ってから寝つくまでに時間がかかるタイプ
中途覚醒 一旦寝ついても夜中に目が覚めてしまい、その後寝つけなくなるタイプ
早朝覚醒 朝普段よりも2時間以上早く目が覚めてしまうタイプ
熟眠障害 朝起きたときにぐっすり眠った感じが得られないタイプ

不眠症の治療

  • 不眠症の治療
  • 不眠症の治療は、「薬物療法」と「非薬物療法」の大きく2つに分けられます。「薬物療法」では、薬による治療を行います。一方、「非薬物療法」では、薬を用いずに生活習慣の改善(睡眠衛生指導)により不眠症の治療を行います。不眠症の治療では、まず不眠の原因を診断し、薬物療法以外の治療を行います。不眠が他の疾患が原因となっている場合は、まずはその原因となる疾患の治療が優先となります。

薬物治療

非薬物治療(睡眠習慣の改善)でも不眠症状が解消されない場合は、薬を用いた治療が行われますが、薬物治療を実施している間も、睡眠習慣の改善は継続しましょう。また、不眠症治療のゴールは、「薬に頼らずとも十分な睡眠が得られるようになることである」という認識を持ち、睡眠薬の服用量は最小限に抑えること、及び服用量を徐々に減らしていき、最終的には睡眠薬の服用がゼロになるように、医師・薬剤師と相談の上、治療スケジュールを立てましょう。

不眠症治療薬の問題点

持ち越し効果 薬の効果が翌朝以降も持続してしまい、午前中の眠気、ふらつきが現れる。
筋弛緩作用 不眠症治療薬の中には、多かれ少なかれ筋肉を弛緩させる作用があります。
立ち上がる時に力が入らず、転倒してしまい骨折に繋がる危険性があります。
記憶障害 服用後の記憶があいまいになったり、経験したことを忘れてしまう。
作用時間の短い睡眠薬で起こりやすい。
反跳性不眠 続けて飲んでいた睡眠薬を、突然中止したことにより、不眠症状がかえって強く現れてしまう現象。作用時間の短い睡眠薬ほど起こりやすい。
依存症 薬を服用していないと落ち着かない、薬が手元にないと不安になってしまう。

睡眠薬服用時のポイント

睡眠薬の問題点を少なくするために、以下のポイントを守りましょう。
・処方された服用量を守る。  ・服用後は、ふらつきや転倒の危険性があるため、床に入る。
・アルコールと一緒に飲まない。→睡眠薬の効果が強く現れてしまう可能性があります。
・睡眠薬を継続して服用している場合は、自己判断で中止しない。

現在、一般的に処方されている睡眠薬は、昔と比べ依存性やその他副作用の危険性は少なくなっていますが、無くなっている訳ではありません。そのため、医師・薬剤師による指示をきちんと守りましょう。また、不眠症治療薬の問題点として挙げたような症状があった場合には、薬の量が多いことなどが考えられるので、医師・薬剤師に相談しましょう。

「フットケア」について

神川由美子(透析看護認定看護師) 森 淳子(フットケア指導士)

私たちが取り組んでいるフットケアは、
「いつまでも自身の足で歩くために足を守るための術(すべ)」です。


フットケアで大切なことは、足をよく見ることです!

こちらの症状はありませんか?

  • 靴ずれ
  • 足の変形
  • たこ
  • うおのめ
  • 水虫(足白癬)
    爪水虫(爪白癬)

毎日見ましょう!足のチェックポイント

    • 足がいつも冷たい
    • 足の皮膚の色が紫色になることがある、または赤や黒い部分がある
    • 100mくらい歩くと足が痛くなるが、少し休むと痛みが治まり、また歩けるようになる
    • よく足がつることがある
    • 足が痛くてどうしようもない時がある
    • 足がピリピリしたりジンジンしたりすることがある
    • 足の裏に何か貼りついている感覚がある
    • つの間にか足に傷ができていることがあり、気付かないことがある
    • 趾間(足の指と指の間)の皮がむけている
    • 爪が白く濁り厚くなってきた
    • 巻き爪である
    • 足の裏などに胼胝(たこ)や鶏眼(うおのめ)がある
    • 踵がカサカサに乾燥したり厚くなったりしてひび割れを起こすことがある

上記の症状があった場合は、下記の診療科にご相談ください。

  • 皮膚科
  • 形成外科
  • 血管外科
  • 整形外科
  • 糖尿病内科

特に糖尿病を患っている方は、合併症である「神経障害」「視力障害」「腎機能低下」が原因で、糖尿病性下肢壊疽(足病変)を引き起こす場合があります。それにより痛みで歩くことがままならなかったり、痛みで夜も眠れなかったりと、身体的・精神的苦痛を強いられます。その上透析が合併してしまうと、さらに足病変のリスクが増えてしまいます。いったん下肢壊疽を発症すると血流障害のため難治性となり、足切断を余儀なくされるケースもあります。

足を毎日チェックして、早期発見・早期治療することが大切です。

靴の選択や履き方により、トラブルを回避することもできます。


講座・イベントのご案内

◆医学健康講座 ※時間…14:00~15:00/会場…STRホール(新百合ヶ丘総合病院3F、定員150名、先着順)

4月17日(水) 肝臓が悪いと言われたら。 消化器内科
医長 土肥 弘義 先生
4月24日(水) 子宮がん検診なんて怖くない ~婦人科がん検診を受けましょう~ 予防医学婦人科
橋本 栄 先生

◆市民医学講演会 ※時間…14:30~15:30

4月16日(火) 認知症の進行を予防する生活の工夫と
期待される新薬
神経内科 部長
矢﨑 俊二 先生
京王プラザホテル多摩4F
たまつばき(定員120名)
4月23日(火) 忍び寄る心臓病
~隠れ心不全~
循環器内科
岩宮 賢 先生
小田急ホテル相模大野8F
相模野(定員120名)

※ 講座の講師及び演題は予告なしに変更になる場合がございます。

2019年2月の救急車受け入れ台数は477台でした。