ホーム 広報紙 2018年11月号

認知症の治療は
陽の当たる
外来で

新百合ヶ丘総合病院
神経内科 部長
やさき しゅんじ
矢﨑 俊二 医師
【プロフィール】
日本神経学会専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医/日本老年医学会専門医・指導医/日本認知症学会専門医・指導医/日本成人病(生活習慣病)学会 認定管理指導医/日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医/臨床研修指導医/日本医師会認定産業医/アメリカ内科学会Fellow(FACP)
  • 神経内科は、内科的原因による脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気を診る科です。主な疾患は、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)、神経変性疾患(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、アルツハイマー型認知症など)、末梢神経障害(ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎など)、本態性振戦、てんかん、頭痛などがあります。現在の常勤医は4人で、私は「物忘れ外来」で認知症を、他の3人は一般神経内科疾患を対象としています。専門外来はそれぞれに特化した疾患を診療しています(詳細は2ページ参照)。

    物忘れ外来の初診患者数は、2013年度:129人、2014年度:240人、2015年度:325人、2016年度:384人、2017年度:440人と増加しています。2018年度は外来数を増やしたので550人を超える見込みです。なお、2015年度の初診患者の約36%がアルツハイマー型認知症、約49%が認知症予備軍の軽度認知障害(MCI)でした。最近はレビー小体型認知症の方が増えています。日本全体の65歳以上の認知症患者数は、2015年には509万人でしたが、2025年には700万人になる見込みです。超高齢社会なので、ますます認知症予備軍も増えると

  • 思われます。

    認知症の予防と治療は、その前段階の軽度認知障害や早期の認知症を診断してもらうことが重要です。本人あるいはその家族などが「物忘れがある」と感じたら、できるだけ早く受診されるのが良いと思います。軽度認知障害の予防法としては、生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症)の予防と改善、バランスの良い食事の工夫、歯を大切にする、運動をする、禁煙、睡眠時間を1日に7~8時間とる、聴力・視力低下の予防と改善、適切な体重の維持、脳トレーニングを続けることなどが大切です。軽度認知障害と診断されても、4年後に認知機能が正常に回復する人が46%もいるという調査報告がありますので、物忘れが出てきても希望を持って積極的に予防策を行うことが大切です。

    私は「親切・丁寧・礼儀正しい・優しい・誠実な」診察と、わかりやすい説明、的確な診療記録の記載、および世界標準レベルの診療を心がけています。外来では、受診される患者さんが通院の楽しみと治療の希望を持てる、「陽の当たる外来」を目指しています。敷居を低くしてお待ちしていますので、物忘れが気になる方は一度ご相談ください。

神経内科の疾患と治療法

神経内科の対象疾患

サイバーナイフとは

神経内科は、内科的原因による脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気を診ます。主な疾患は、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)、神経変性疾患(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、アルツハイマー型認知症など)、脱髄疾患(多発性硬化症など)、筋疾患(重症筋無力症など)、神経感染症(髄膜炎、脳炎、脊髄炎など)、末梢神経障害(ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎など)、本態性振戦、てんかん、頭痛などがあります。なお、疾患ではありませんが、意識障害、頭痛、めまい、複視、視野障害、呂律障害などの言語障害、記憶障害、手足の麻痺やしびれや不随意運動、歩行の異常、痙攣などの症状も神経内科で診ています。

検査・治療

検査は、一般内科診察、神経学的検査、血液検査、心電図、胸部レントゲン写真、頭部CT/MRI/MRA、その他の画像検査(脳血流シンチ、MIBG心筋シンチ、DATscanなど)、脳脊髄液検査、筋電図、神経伝導検査、脳波、遺伝子検査などを行います。治療は、薬剤治療とリハビリテーションが基本です。

「物忘れ外来」と認知症

肺扁平上皮癌

◆対象:物忘れ症状のある初診・紹介患者さんの診療を主としています(精神症状などの認知症の周辺症状が強い場合は、精神科を受診していただきます)。

◆検査:問診、診察、神経心理テスト(長谷川式簡易知能評価スケール、MMSE)、血液検査、画像検査(頭部CT、頭部MRI/VSRAD、脳血流シンチ、MIBG心筋シンチ、DATscan)を行います(いずれも保険診療の範囲です)。

◆治療:薬物療法、非薬物療法(心理療法、回想法、リアリティ・オリエンテーション、音楽療法、脳トレーニングなど)、そして介護が基本です。現在、アルツハイマー型認知症の根本治療薬はありませんが、認知機能改善薬剤にはコリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体アンタゴニスト(保険診療)があります。レビー小体型認知症には、コリンエステラーゼ阻害薬が保険適応で使用されています。軽度認知障害と、その他の神経変性疾患の認知症に特化した保険適応の治療薬はありません。現在、いくつかのアルツハイマー型認知症の根本治療薬の開発と治験が世界的に行われています。その中で最も有望なアデュカヌマブという薬剤の臨床試験が2022年に終了予定なので、うまく成果が出れば販売されて、保険適応で使えるのではないかと期待されています。

対象となる症状~サイバーナイフで行う治療~

◆軽度認知障害の予防:生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症)の予防と改善、バランスの良い食事(青魚、緑黄色野菜・果実、ナッツ類、豆、穀物などを多く食べる)、歯を大切にする(歯を20本以上保つ、入れ歯を使う)、運動、禁煙、禁酒、睡眠時間を1日に7~8時間とる、聴力低下の対応(補聴器を使う)、視力低下の改善(眼鏡を使う、白内障の治療をする)、適切な体重の維持(特にやせすぎに気をつける)、脳トレーニングを続けることなどが大切です。物忘れが出てきても、希望を持って積極的に予防策を行いましょう。

◆運転免許更新のための「認知機能検査」:今年3月改定で75歳以上の方の免許更新時の認知症テストがあります。49点未満の方は医療機関で認知症の診断を受けることになっており、当院でも診断を行っております。

★月曜日 9:00~12:00【予約制】/火・水曜日 8:30~12:00【予約制】/
 木・金曜日 14:00~17:00【予約制】
★医師:矢﨑 俊二 医師(神経内科 部長)

  • 「パーキンソン病外来」

    パーキンソン病およびその関連疾患の方のための専門外来です。進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、血管障害性パーキンソニズム、本態性振戦などが含まれます。症状としては、手足のふるえ、歩行障害、動作緩慢、手足の筋肉が固い、よく転ぶ、失神をして転ぶ、手足が勝手に動く、などがあります。患者さんの特徴をみながら、患者さんに最も適した治療薬の飲み方を工夫します。

    ★火曜日 14:00~17:00【予約制】
    ★医師:水野 美邦 医師(順天堂大学名誉教授)

  • 「ボツリヌス神経治療外来」

    ボツリヌス治療とは、ボツリヌス菌が作り出す天然のタンパク質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法です。片側顔面痙攣、眼瞼痙攣、痙性斜頸、痙縮など、本人の意思とは関係なく筋肉の痙攣や過剰な緊張によりピクツキや異常な姿勢を示す症状を治療します。個々の患者さんに応じたテイラーメイドのボツリヌス治療を目指しています。

    ★木曜日 9:00~12:00、14:00~17:00【予約制】
    ★医師:大澤 美貴雄 医師(日本ボツリヌス治療学会理事 )

薬剤科コラム

フレイルとONS(栄養補助食品)

薬剤科 副主任心得 德長 ありさ

今回は、いろいろなところで耳にする「フレイル」と、フレイル対策に役立つ「ONS」についてご紹介いたします。

フレイルとは「加齢により心身の活力が低下した状態」を表し、「虚弱」を意味する英語「frailty」を語源にして、日本老年医学会が提唱した体の状態になります。フレイルは「健康」と「要介護状態」の中間点に位置し、多くの人が健康な状態からフレイルの段階を経て要介護状態に陥るとされています。要介護状態は不可逆性が強いとされていますが、フレイルは可逆性があるとされているため、フレイルの兆候に気づいたら悪化しないようにできるだけ早く適切に対処することが重要となります。適切な対処によって、生活機能の維持・向上につながり、介護を必要とする期間を遅らせ、要介護期間を短縮できると考えられています。

フレイルサイクル

フレイルの判定基準については十分に確立していませんが、現在は日本版CHS基準(J-CHS基準)が繁用されており、5項目が判定基準にあげられています。この判定基準にはサルコペニア(筋肉減弱症 ※注釈参照)の要素が含まれています。低栄養状態が続くとサルコペニアにつながり、サルコペニアになることでエネルギー消費量が低下します。その結果、食欲低下・食事摂取量の低下を招き、さらに低栄養状態を進行させます。このような低栄養状態の持続とサルコペニアが密接に関連していることをフレイル・サイクルとして示すことができます(右図)。
注釈:サルコペニア(Sarcopenia)は、1989年Rosenbergにより、加齢に伴う骨格筋減少症として提唱されました。現在では、骨格筋量の低下とともに握力や歩行速度の低下などの身体機能の低下についても含めた概念となっています。


フレイルは3つの要因が相互に関連していると言われています。①体の衰え(身体的フレイル)、②心・認知の衰え(精神的・心理的フレイル)、③社会性の衰え(社会的フレイル) 。フレイルの3つの要因を悪化させずに予防・改善するためには、3つの柱「運動」(ウォーキング、筋肉トレーニング)、「栄養」(たんぱく質をとりいれたバランスの良い食事、口腔内の定期的な管理)、「社会参加」(友達と一緒に食事をとる、サークル活動やボランティア活動に参加する、習い事をする、など)が必要とされています。これらの要因のうち、医療用医薬品でお手伝いできる「栄養」の予防・対策の一部をご紹介します。


「食べること」は栄養をとること、「生き甲斐」や「楽しみ」を感じること、免疫力を維持・向上させることができます。しかし何らかの理由で「食べる力」が衰えると「栄養障害」が進み、要介護状態に至ります。
土台となる栄養「食べること」がうまくいかなくなったとき、ONS(Oral Nutritional Supplements:栄養補助食品)を活用することで低栄養の進行を予防できます。ONSは少量でありながら高カロリーで必要な栄養素のほとんどを含有しており、食べられないときや食事量が減ったときに、食事で十分な栄養を摂れるようになるまで、健康維持の土台となる栄養(エネルギー源)として体を支えてくれます(右図)。


現在、ONSはさまざまな製品が販売されています。医療用医薬品では主に4製品が使用されていますが(下表)他にもご自身で購入可能な食品も多数販売されており、用途や味の好みにあわせて利用できます。治療中の病気がある方や服用中の薬がある方がONSを活用する際は、医師・薬剤師・管理栄養士にご相談ください。ONSによっては病気の治療や薬の飲み合わせに注意が必要となる場合もあります。

栄養補助食品

脳年齢ドックのご案内

講座・イベントのご案内

◆医学健康講座 ※時間…14:00~15:00/会場…STRホール(新百合ヶ丘総合病院3F、定員150名、先着順)
11月7日(水) がんの高精度放射線治療 高精度放射線治療センター センター長
森 美雅 先生
11月14日(水) 消化器がんの予防と治療
~胃・大腸・すい臓などのがんにならないために~
※講座前12:30よりオータムコンサート開催
消化器内科 部長
廣石 和正 先生
11月27日(火) 糖尿病について 糖尿病・内分泌代謝内科 医長
秋山 知明 先生
11月29日(木) 感染対策あれこれ~マスクの正しいつけ方、手指消毒~ 看護部/感染管理認定看護師
砂辺 彩
◆市民医学講演会 ※時間…14:30~15:30
11月28日(水) 「禁煙のすゝめ」
~加熱式タバコは禁煙とは言えません~
予防医学センター
消化器内科部門 部長
袴田 拓 先生
ベストウエスタンレンブラントホテル
東京町田/B2翡翠(定員120名)
11月30日(金) 不整脈と脳梗塞
~予防できる脳梗塞があります~
循環器内科 医長
吉竹  貴克 先生
小田急ホテルセンチュリー相模大野/
8F相模野(定員120名)

※ 講座の講師及び演題は予告なしに変更になる場合がございます。

「世界糖尿病デー」にちなみ、11月15日(木)にイベント『糖尿病は怖い?』を開催します。午後のセミナーでは糖尿病チームスタッフによる講義や、運動前後に血糖値を測った結果を、当院糖尿病内科医師よりお聞きいただけます。新百合ヶ丘総合病院3階 STRホール、13:30(開場13:00)~16:20、参加無料・予約不要。持ち物 …筆記用具・ノート、水分補給用飲料。

2018年9月の救急車受け入れ台数は550台でした。