広報紙 vol.13しんゆりニュースレター

広報紙 vol.13しんゆりニュースレター

世界最高水準の呼吸器外科医療を
地域に活かす

新百合ヶ丘総合病院
呼吸器センター長、呼吸器外科統括部長
おだ まこと
小田 医師
【プロフィール】
1984年金沢大学医学部卒業。90年金沢大学医学部附属病院第一外科助手。97年同講師。2004年石川県立中央病院呼吸器外科部長(05年がん診療センター長併任)。06年金沢大学附属病院呼吸器外科臨床教授 兼 金沢大学大学院医学系研究科准教授。14年ニューハート・ワタナベ国際病院病院長 兼 呼吸器外科部長。16年より現職。この間、1992年7月~93年9月ハイデルベルク大学胸部外科病院(ドイツ)臨床留学。2002年2月文科省短期海外派遣「胸部外科領域における遠隔操作用ロボットの開発動向調査」East Carolina大学(米国)。

医学博士/日本外科学会専門医・指導医/呼吸器外科専門医/日本呼吸器外科学会指導医/日本胸部外科学会指導医/日本呼吸器学会専門医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医/日本呼吸器外科学会評議員/日本内視鏡外科学会評議員/日本呼吸器内視鏡学会評議員/癌治療認定医/ダヴィンチコンソールサージャン
  • 当院の呼吸器外科では肺がん、気胸、縦隔腫瘍、胸壁腫瘍などの手術を行っています。呼吸器内科、放射線診断科、病理診断科、リハビリテーション科と連携をとって、患者さんにベストな治療が行える体制を整えております。手術はがん死亡原因で最多の肺がん(2ページ参照)患者さんが半数以上です。当院では早期病期の肺がんに対する胸腔鏡手術から進行肺がんに対する拡大手術まで、患者さんの病態、全身状態に応じて、適切な治療法を患者さんと相談しながら決めています。

    肺の手術は肋骨の間から胸の中に入る必要があり、肋間神経が障害されるので一番痛い手術に分類されています。私が医者になりたての頃は、肋骨を折って30cmほど開胸していました。痛みが残り、社会復帰も遅かったです。しかし低侵襲の胸腔鏡手術が発展したことで、疼痛を最小限に抑え、創もほとんど残らないようになりました。今では、1肋間にだけポートあるいは切開創をおいた「単孔式胸腔鏡手術」や、肋間より下のお腹の部分に主たる切開創を設け、肋骨の間には3mmの細いポートだけを入れる

  • 「助弓下経横隔膜手術」といった最先端の手術も行っております。これらの手術により、約9割の患者さんが術後2日目に退院されています。

    私は1992年から1年3ヶ月間、ドイツのハイデルベルク大学胸部外科病院でありとあらゆる手術を日々学び、2002年にはアメリカでロボット支援手術を学びました。ロボット支援手術では、日本での先駆けとして2010年に縦隔腫瘍、2011年に肺がん切除に対する手術を行いました。今は全国の若い外科医に手術手技を教えながら、海外の学会にも積極的に出席し、常に新しい医療に目を向けています。中華人民共和国衛生部中日友好病院の客員教授、フィリピン低侵襲胸部外科学会名誉フェローも務めており、世界的視野に立った最高水準・最先端の医療を追求し、それを地域の皆様の診療に活かしていきたいと考えています。

    私のモットーは「気診心診」です。いつも患者さんの気持ち・心を考える姿勢でおります。私の夢としている「創のない・痛みのない・笑顔で退院して早期社会復帰できる」手術を目指して、今後も精進していきます。外科医として皆様の人生のお役に立てれば幸いです。

呼吸器外科の疾患と治療法

≪ 肺がん ≫

  • 肺がん
    呼吸器外科の疾患と治療法
    手術中の小田先生
    手術中の小田先生
  • 肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞ががん化したものです。進行するにつれて増殖し、血液やリンパの流れにのって広がっていきます。肺がんの主な症状には、咳(1ヶ月以上空咳が続く)、呼吸困難(息切れ、息苦しさ)、痰(量が増えて色が濃くなる)、血痰(血の混じった痰)、飲み込みにくさ、胸の痛み、などがあります。肺がんには「小細胞がん」と「非小細胞がん」があり、さらに「非小細胞がん」を「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」の3種類に分類しています。肺がんは、大きく分けて肺門部と肺野部に発生します。肺門部とは肺の入口の気管支のことで、扁平上皮がんが多く、肺野部と呼ばれる肺の奥にできるのは腺がんが大部分です。

    治療法は、肺がんの進行度によって変わります。病期分類としては0・1・2・3・4期に分かれており、手術対象者は0期、1期、2期の患者さんが主になります。ほぼ無症状であり、健康診断で見つかる方が大多数です。肺は、右の肺が上葉、中葉、下葉の3つ、左の肺が上葉、下葉の2つに分かれています。これまでは、例えば下葉にがんができると、下葉すべてを摘出するのが肺がん手術の原則でした。しかし、がんの早期発見が可能となり、部分切除や区域切除のように、切除範囲を最小限にとどめられるようになりました。早く見つかれば、低侵襲の胸腔鏡手術により小さな創で手術ができます。

今では、より体にやさしい「助弓下経横隔膜手術」(肋間には最小限の創およびポートを設け、肋間以外の部位に主たる切開創を設ける胸腔鏡手術)や「単孔式胸腔鏡手術」(1肋間にだけポートあるいは切開創をおいた胸腔鏡手術)といった最先端の手術も行っています。これらの手術により9割以上の患者さんは術後2日目に退院されています。理想としては痛みのない創の小さな手術ですが、一番大切なことは疾患を治すことなので、患者さんに応じて胸腔鏡か開胸かを決めています。がんが進行した場合だと、手術後に抗がん剤をしたり、先に抗がん剤と放射線照射治療をしてから手術を行う場合もあります。

早期治療により、現在では肺がんに罹患しても、長期生存される方が増えてきています。低線量CT健診やPET-CT健診で早期に肺がんが見つかれば、より小さな創で、より社会復帰の早い手術を受けられます。

<肋弓下アプローチ> <単孔式手術>
肺葉切除 肺部分切除 肺葉および肺部分切除
肺葉切除 肺部分切除
  • 《 気胸 》
    気胸とは、肺に嚢胞という風船のような小さいものができ、それが破れて胸の中に空気が溜まった状態です。息を吸っても肺が広がりにくく、呼吸がうまくできません。軽度であればそのまま経過を観察しますが、肺がしぼんでいる程度が大きければ、ドレーンという管を胸の中に入れたり、胸腔鏡手術を行います。




  • 《 縦隔腫瘍 》
    縦隔とは左右の肺の間に位置する部分のことを指しており、心臓、大血管、気管、食道、胸腺などの臓器があります。縦隔腫瘍とは、これらの縦隔内臓器に発生した腫瘍の総称です。がん、胸腺腫、嚢胞性疾患など、さまざまです。発生年齢は小児から高齢者まで幅広く、悪性も良性もあります。大部分の疾患は胸腔鏡手術が可能なので、大きな腫瘍、複雑な腫瘍でなければ、3mmの創2ヶ所と5mmの創1ヶ所※から胸腔鏡手術を行っております。今年からは、保険診療となったロボット支援手術も施行可能ですが、多くの腫瘍に対して胸腔鏡手術の方がより小さな創で、短時間で行うことができます。
    ※院内で配布しております広報紙(印刷物)では、「2か所」になっておりましたが、正しくは「1か所」です。訂正してお詫びいたします。

専門外来のご案内

  • 婦人科腫瘍外来 鈴木 光明医師
  • 婦人科腫瘍外来

    子宮がん、卵巣がんなどの婦人科がんの早期診断と適切な治療選択、セカンドオピニオンも適宜対応します。

すずき みつあき
がんセンター センター長、産婦人科  鈴木 光明 先生

医学博士/自治医科大学名誉教授・慶應義塾大学医学部卒/日本産婦人科医会がん担当常務理事/日本産科婦人科学会専門医・指導医/ 日本臨床細胞学会専門医・教育研修指導医/日本婦人科腫瘍学会専門医・指導医/日本がん治療認定医機構がん治療認定医・教育医/日本専門医機構認定産婦人科専門医

専門外来の特長

婦人科がんの早期発見に力を注ぎ、それによって当科が得意とする腹腔鏡手術などを駆使し、患者さんに優しいがん治療を提供します。また、診断、治療方針にお悩みの方へのセカンドオピニオンも随時施行します。

扱う主な疾患と主な検査

子宮頸がん・前がん病変(異形成)の診断:検診で要精査とされた患者さんなどを対象に細胞診、コルポスコピー、組織診、HPV検査などにより確定診断し、適切な治療方針を提示します。

子宮体がんの診断とスクリーニング:内膜細胞診・組織診、経腟超音波検査などにより子宮体がんの早期診断を目指し、侵襲の少ない腹腔鏡手術による治療を優先的に行います。

卵巣腫瘍の診断:内診、超音波検査、MRI、CT、PETを駆使して卵巣腫瘍の良悪性の鑑別、適切な治療を指示します。

婦人科がんのセカンドオピニオン

婦人科がん(前がん病変)の診断、治療方針、妊孕性温存の可能性など、女性の腫瘍に関する医学的相談に応じます。

患者さんへ

子宮頸がんは若年女性(20~39歳)に発症する悪性腫瘍で乳がんに次いで多く、最近の日本の調査によれば、妊娠に合併する悪性腫瘍で断トツの第1位となっています。子宮体がんは50歳代がピークですが、生活様式の欧米化に伴い30年前に比べ5倍に急増しています。また卵巣がんも同様の理由で顕著な増加がみられています。これらの婦人科がんから大切な命を守るためには、早期発見が大切であり、そのためには正確な診断が不可欠です。そしてできる限り患者さんに優しい腹腔鏡手術などによる低侵襲医療を適応したいと思っています。お役に立てれば幸甚です。

診察日

◆火曜日 午後(13:50-16:00)
外来診療予約専用TEL(通話料無料) 0800-800-6456【予約制】
※外来診療担当表をご確認の上、ご予約をお取りいただいてからご来院ください。

講座・イベントのご案内

◆医学健康講座 ※時間…14:00~15:00/会場…STRホール(新百合ヶ丘総合病院3F、定員150名、先着順)
8月3日(金) 糖尿病について知っていますか? リハビリテーション科 岩﨑 敏生
8月22日(水) 1部:うちの子、食物アレルギー?
2部:こんなときどうする?家庭で出来る子どもの事故防止!
※お子様とご一緒に参加できます
小児科 医長 安原 理恵子
看護部 大橋 ルミ
8月29日(水) 1部:介護保険制度と認知症~抱え込まずに相談しよう~
2部:認知症の“今”を学ぼう~新時代の予防と進行抑制~
※講座前13:00より「アンサンブルコンサート」を開催
医療福祉課 嶋﨑 晃
栗木台地域包括支援センター 榎田 ゆり
◆市民医学講演会 ※時間…14:30~15:30
8月7日(火) タバコとくちの病気 歯科口腔外科 部長
喜久田 利弘 先生
ベストウェスタンレンブラント
ホテル町田/B2翡翠(定員120名)
8月21日(火) むくみと心臓について 循環器内科 医長
小西 裕二 先生
稲城市立
iプラザ ホール(定員120名)
8月23日(木) 知っておきたい糖尿病
~糖尿病と言われたらどうしますか?~
糖尿病内科 部長
西野 和義 先生
小田急ホテルセンチュリー
相模大野/8F相模野(定員120名)

※ 講座の講師及び演題は予告なしに変更になる場合がございます。

2018年6月の救急車受け入れ台数は505台でした。