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In 'Bedside' Veritas
真理はベッドサイドにあり

新百合ヶ丘総合病院
耳鼻咽喉科 部長
とうじまさお
田路正夫医師
【プロフィール】
慶応義塾大学医学部卒業。フランス政府給付留学。
前東京都済生会中央病院医長。2012年8月より現職。

日本耳鼻咽喉科学会認定専門医

慶応義塾大学医学部非常勤講師
  • 二人に一人が癌にかかる現在、癌の診断と治療の長足の進歩により、それでも平均寿命は延び続けています。その結果、一生で複数の癌にかかる人が増え続け、出来るだけ犠牲の少ない方法で癌を治すことが、ますます重要になってきました。さらに近年、免疫現象が癌治癒に重要な役割を担っていることが明らかになり、免疫低下をきたす侵襲性の高い治療や、過剰な追加治療を猛省する機運が高まっています。こうして低侵襲と腫瘍免疫賦活の二つがキーワードとなって、今まさに癌医療に地殻変動が起きつつあります。

    一般に癌治癒の指標は、再発なく5年を経過することです。5年生存率が最も高く、既に安全性が確立された治療のことを標準治療と呼びます。最近、頭頸部癌治療の基幹となる大規模臨床試験において、5年生存率の最も高い治療法が、さらに長期に観察していくと、より低侵襲な治療法に生存率で逆転される現象が指摘されました。癌を治すことが一番大切ではありますが、寿命を延ばすことも新たな課題として提出されたわけです。今後度重なる臨床試験を経て、標準治療はより低襲の方向へ向かっていくと考えられます。

  • しかしながら、医師は患者さんに現行の標準治療を説明推奨する義務があり、安易に低侵襲治療を勧めることは戒められます。なぜなら、標準治療で十分治癒を期待できる患者さんが、みすみす治癒機会を失う危険性が高いですし、いわゆる低侵襲をうたう治療法でも、安全性の検証が十分と言えないことが多いからです。しかし、標準治療で殆ど治癒見込みがないと宣告されたり、超高齢など諸々の事情で、侵襲の高い治療がなかなか受け入れられない患者さんに対しては、当科では保険診療の許す範囲で、医師主導の時宜を得た合理的な低侵襲治療を積極的に構築し、門戸を開いています。

    医療の本分は治療ガイドラインの適用にあるのではなく、複雑な日常臨床の中での創意と工夫にあります。とりわけ癌治療のパラダイム(規範となる見方や捉え方)が大きく変化する時期にあって、進行癌の患者さんを前にするとき、真理は教科書やネットの中ではなく、ベッドサイドにあるのだと肝に命じています。そして、治せる癌は低侵襲で治すようにし、治せないとされた癌を治していくことが自分の使命と考えています。

耳鼻咽喉科のご紹介

特長

当院の耳鼻咽喉科では、耳、鼻、咽喉の一般的な疾患ならびに頭頸部腫瘍、甲状腺腫瘍の診断と治療を行っています。

耳、鼻、咽喉、頸部の症状でお困りの方は、まず月曜日~土曜日の午前の一般外来を受診していただいております(8:30~11:30受付)。専門的な診断と治療を要する疾患をお持ちの患者さんは、各領域を専門とする医師が担当する専門外来(下記参照)を受診していただきます。他院からの紹介状をお持ちの方や、ご希望の方は、専門外来に直接初診で受診することが可能です。ただし、耳鳴・難聴外来、補聴器相談外来に受診希望の方は、症状の問診や聴力検査などの一般的な診察を要しますので、まず一般外来を受診してください。

外来

【一般外来】 月曜日~土曜日の午前2診(月・木曜日は9:00~11:30、火・水・金・土曜日は8:30~11:30受付)。 4人の常勤医および慶應大学、杏林大学の各医局からの派遣医師が診療を担当しています。
【専門外来】
★頭頸部甲状腺腫瘍外来《水曜、金曜、土曜午後》 担当:田路正夫医師、大塚邦憲医師
★鼻副鼻腔アレルギー外来《第3火曜午後》 担当:荒木康智医師/鼻科学一般、後鼻神経離断術
★鼻副鼻腔頭頸部外来《第1土曜午後》 担当:田路正夫医師/鼻副鼻腔疾患
★耳鳴・難聴外来《火曜午後》 担当:伊藤まり医師/TRT療法等耳鳴治療
★補聴器相談外来《月曜午後》 担当:貫野彩子医師/補聴器適合
★めまい外来《第2・4土曜午後》 担当:武井泰彦元杏林大学助教授/めまい平衡学
★めまい難聴外来《第1・3・5土曜午後》 担当:神崎仁慶應大学名誉教授/耳科学一般
★喉頭音声外来《木曜午前》 担当:磯貝豊前国際医療福祉大学教授/喉頭音声学

頭頸部甲状腺腫瘍外来


耳鼻咽喉科の手術

頭頸部甲状腺腫瘍外来では、頭頸部領域の良性及び悪性腫瘍(癌)の診断と治療を行っております。この領域には、視る、嗅ぐ、咀嚼する、飲み込む、聴く、話す、顔貌表情を作るといった重要な機能が集中しており、治療に際して、疾患の治癒のみでなく、生活の質を保つための考慮が不可欠です。

頭頸部癌の種類は多彩で、甲状腺癌、舌癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、耳下腺癌、顎下腺癌、外耳道癌、原発の不明な頸部転移癌などがあります。それぞれの癌によって臨床経過が異なり、病期、組織型によって治療法が異なります。当科ではPET-CTによる精緻な画像診断をもとに、機能温存手術、サイバーナイフやIMRTといった低侵襲放射線治療、嘔気の少ない化学療法や免疫療法等を駆使して治療を行っています。

生活習慣病としての咽喉頭酸逆流症

風邪も引いていないのに、咽喉の違和感が数ヶ月あるいは年単位で延々と続くようでしたら、咽喉頭酸逆流症が疑われます。この症状でお困りの患者さんが、この20年間特に都心部で激増しています。食道裂孔ヘルニアや胃下垂など、個人の体質によって起こりやすいのですが、激増した原因は、都会人の生活習慣の急激な変化に求められます。高脂肪高蛋白食の摂取とライフスタイルの変化が主な要因ですが、産業化社会の進展、浸透と根深く関連する文明病です。

胃酸分泌抑制薬が処方されがちですが、なかなか好転しないことが多く、むしろ薬に頼らず、生活習慣を改善していくことが根本治療となります。すなわち、就眠時に胃に内容物が残っていないように心掛けることですが、これがなかなか難しいのです。具体的には就眠2時間前には夕食を切り上げ、また夕食には濃厚な食事や大食を避け、大食した際には枕を積み上げてリクライニングのようにして、胃から咽喉への胃酸の逆流を防ぐことです。ただし、上部消化管内視鏡で食道や胃に重篤疾患のないことを確認しておくことが重要です。

リハビリテーション科からのお知らせ

作業療法士とは

「リハビリテーション」という言葉は、昨今誰もが聞いたことがある言葉になってきています。しかしリハビリテーションを行うにあたって、それぞれ専門のセラピストがいることは、実際にリハビリを受けるまでは知ることが少ないと思います。

当院のリハビリテーション科には、現在「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」といった3職種のセラピストがいます。リハビリテーション=理学療法士というイメージが強く、理学療法という言葉は聞いたことがある方が多いと思います。また、言語聴覚士は文字通り言葉のリハビリテーションというイメージがしやすいと思います。その中で「作業療法士」という言葉は触れ合う機会も少なく、文字を見てもイメージがしにくいと思います。今回は「作業療法」、「作業療法士」について少しお話をいたします。

《作業を通じて利用者さんにリハビリテーションを提供》

まず作業療法では、基本的な運動能力(心身機能)から、応用的動作能力(食事・トイレ・家事といった日常の生活で必要な活動)、社会に適応する能力(地域への参加・就労・就学)まで3つの能力を維持、改善し、その人らしい生活の獲得を目標とします。そして作業療法士は、「作業」を通じて患者さん若しくは利用者さんにリハビリテーションを提供いたします。この「作業」というのは、手作業であったり、手工芸はもちろん、食事をしたり、家事をしたりといった、人の日常生活に関わる全ての諸活動を「作業」と呼んでいます。

例えば、脳卒中により片麻痺になってしまった場合、手足を動かす基本的な運動能力のリハビリを行い、それを基に食事・トイレ動作といった応用的動作能力のリハビリにつなげます。また、病院から自宅へ退院するにあたり、社会復帰に向けて社会へ適応する能力を身に着けるリハビリを行います。これらのリハビリを行うためには身体機能面だけではなく、「その人らしい生活」を尊重することで精神機能面においてもフォローアップを行い、心理的な部分の安定を図ることで、より安心して社会復帰・社会への参加をすることができます。

作業療法士とは

当院リハビリテーション科作業療法士一同は、『病気やけが、障害がある方、日常生活に支援が必要なすべての人が、年齢に関係なく社会とのつながりを「作業」を通じてつくっていってほしい』と願い、日々のリハビリテーションを提供しております。

専門外来のご案内

耳鳴・難聴外来

難聴に伴う耳鳴に対して、病態の説明と音響療法により耳鳴に慣れていただく治療です。

いとう
耳鼻咽喉科 科長伊藤まり先生

日本耳鼻咽喉科学会認定専門医/日本抗加齢学会認定専門医

専門外来の特長

火曜日午後の耳鳴・難聴外来では、最新の耳鳴治療で、耳鳴を気にしなくなる療法であるTRT(Tinnitus Retraining Therapy)を行っております。耳鳴の原因になるような疾患の有無を検査した後、TRTを施行します。他の医療機関で「諦めてください」と言われた方、「眠前などに耳鳴が気になる」という方の受診もお勧めします。

TRT(Tinnitus Retraining Therapy)について

TRTとは、耳鳴順応療法ともいい「脳を耳鳴の音に順応させるように訓練する方法」です。補聴器を装用する、またはSG(サウンドジェネレーター)から耳鳴とはタイプの異なるノイズ音を流すことで、耳鳴から意識を逸らします。聴力正常または軽度難聴の患者さんにはSGを、難聴の自覚のある中等度以上の難聴の患者さんには補聴器を用いたTRTを施行しております。耳鳴の患者さん全てにTRTを施すわけではなく、急性期の方(急性感音難聴、突発性難聴など)、重度のうつ病の方、耳鳴による生活障害度の低い方、耳鳴がなくなることを目的とする方には、TRT療法が向いていない場合もあります。

治療の流れ

①一般耳鼻咽喉科外来…まずは月曜~金曜日午前の一般耳鼻咽喉科外来で診察をします。問診票、聴力検査・耳鳴検査を施行します。患者さんの希望があれば耳鳴の原因の精査のためMRIを施行する場合もあります。TRTおよびSGの装用、または補聴器のフィッティングは担当医師が適応であると判断した場合に施行しています。急性・慢性のいずれか?あるいは他の治療法(薬物治療法)で効果があるかどうか?などの事前判断に基づいています。初診時にTRTの適応と判断された症例に対して耳鳴・難聴外来の予約をとります。
②TRT耳鳴難聴外来初診…補聴器またはSGを患者さんの聴覚データに合わせてフィッティングします。この時にSGから出す音源(ノイズ)を設定、または補聴器の利得設定を行います。貸し出し試用期間はSGでは約1ヶ月、補聴器では約1~2ヶ月としております。SGは耳鳴が気になる時間帯を中心に1日8時間前後使用します。
③TRT再診1ヶ月後…1ヶ月後にSGや補聴器により耳鳴が軽快したか、治療器を正しく使用できているかどうか確認します。補聴器適合検査、補聴器特性測定検査を行い、言語聴覚士による治療の説明、リハビリ指導を行います。SGまたは補聴器を装用することに違和感を訴える患者さんもいますので、再診時に音源の再調整をします。
④TRT再診2~3ヶ月後…SG及び補聴器により自覚的にも耳鳴スコア上も耳鳴改善感が得られたら購入していただき治療を継続いたします。SG及び補聴器は貸し出し試用期間を経て購入(保険診療外)となります。
⑤TRT再診3~6ヶ月後…購入後順調な場合や、SGまたは補聴器の調整の必要がない時も、3~6ヶ月に1回の診療で経過をみます。

診察日

◆火曜日 14:00(初診枠13:00)~17:00

講座・イベントのご案内

◆医学健康講座 ※時間…14:00~15:00/会場…STRホール(新百合ヶ丘総合病院3F、定員150名、先着順)
5月15日(火) アルツハイマー病と最近の検査と治療薬
★12:30よりヘルマンハープ演奏会開催
神経内科 部長 矢﨑 俊二 先生
5月18日(金) この苦痛をちゃんと伝えたい
~上手に診察を受ける6つのポイント~
総合診療科 部長 川島 彰人 先生
5月22日(火) 知っていますか介護保険
~家で上手に暮らしていくために~
リハビリテーション科 石川 茂幸
◆市民医学講演会 ※時間…14:30~15:30
5月8日(火) 飲んではいけないくすりの話は本当か?
~心臓のくすりの疑問にお答えします~
循環器内科 
羽田 泰晃 先生
町田ベストウエスタンレンブラント
ホテル B2F翡翠(定員120名)
5月11日(金) 脳梗塞になるとどうなるの?
~予防・治療・リハビリまで~
神経内科  医長
大内 崇弘 先生
永山公民館5F ベルブホール
(定員120名)
5月29日(火) 腎臓病について正しく理解しよう
~ADLを落とさないための選択肢~
腎臓内科 部長
篠崎 倫哉 先生
小田急ホテル相模大野
8F相模野(定員120名)

※ 講座の講師及び演題は予告なしに変更になる場合がございます。

2018年3月の救急車受け入れ台数は599台でした。