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患者さんの病態を把握し、
最善の治療を

新百合ヶ丘総合病院 呼吸器内科
呼吸器疾患研究所 所長
ながいあつし
永井厚志医師
【プロフィール】
東北大学医学部卒業。1973年聖路加国際病院レジデント。1974年東京女子医科大学総合内科医療練士。1982年ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)留学。 1990年東京女子医科大学医学部講師、助教授を経て1997年同大学主任教授。2001年同大学医学部呼吸器センター所長、2006年同大学病院院長、2010年同大学統括病院長(理事)を経て、2015年より現職。

日本内科学会名誉会員/日本呼吸器学会名誉会員(理事長、学会長歴任)/日本肺癌学会特別会員/COPDガイドライン作成委員長

当院の呼吸器内科は専門医が6名の体制で臨んでおります。4名の常勤医師、2名の非常勤医師はそれぞれ各分野の第一人者であり、日本では第一級レベルの質の高い診療を行っています。呼吸器外科との連携が非常に密で、毎週必ず両科の医師が集まって、患者さんの集学的治療(内科的治療・外科的治療・放射線治療など複数の治療法を組み合わせて行う治療法)を行っているのが大きな特長です。

呼吸器内科が担当する疾患は、肺炎・結核などの感染症、喘息をはじめとしたアレルギー疾患、肺癌をはじめとした腫瘍性疾患、COPDといった喫煙関連疾患、さらに間質性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群など多岐にわたります。当院で最も多い疾患は感染症で、軽いものは風邪からはじまり、肺炎・重症肺炎、そして高齢者の方には誤嚥性肺炎が多くみられます。

治療につきましては、基本的なガイドラインはありますが、それが誰にでもあてはまるわけではありません。つまり、一人一人の患者さんの病気の状態が違えば、治療の効果の現れ方も違ってきますから、個別の治療が重要になってくるのです。薬剤も日々進歩していますので、それぞれの患者さんに適した薬を厳選します。私が診療にあたって大切にしていることは、「患者さんの病態をどう把握するか」という、この一点につきます。これは研修医時代から変わっておりません。

今後の抱負としましては、この神奈川県北部の地域医療連携を推進していきたいと考えております。現在、日本全国で呼吸器内科医が減少していることもあり、地域医療を存続させるためには医療連携が必要です。それぞれの医療施設で得意・不得意分野がありますから、そこは役割分担をして、患者さんをいつも良い状態にもっていけるようにしたいと思うのです。

正確な診断のもとに呼吸器疾患の治療を受けたいという患者さんのご要望がございましたら、私共はいつでもお受けさせていただきます。そして治療には最善の努力をつくしますので、今後ともよろしくお願いいたします。

呼吸器内科を受診の際は、ご予約をおとりの上、ご来院なさることをお勧めいたします。
【予約電話番号:0800-800-6456(9:00~17:00)】 ※月~土(日・祝日除く)

● COPD(慢性閉塞性肺疾患)◇◇◇700万人の患者さんがいると推計されています◇◇◇

日本では、COPDの一番の原因は喫煙であると考えられています。また「pm2.5」という大気汚染物質も肺にダメージを与えるとされ、問題になっています。個々の方に関してCOPDの原因を突き止めることは難しいのですが、疫学調査(病気の原因と思われる環境因子を設定し、その因子が病気を引き起こす可能性を調べる統計的調査)の結果をもとに推測します。動作時に息切れがするのが特徴で、在宅酸素療法(HOT)をされる方の約半数はCOPDの患者さんです。在宅酸素療法は生命維持に不可欠ですが、その本来の目的は、酸素を吸うことによって身体を動かしていただくことにあります。しかしながら、携帯用酸素ボンベの機械が大きかったり、引っ張って移動しなければならないということがあり、逆に身体を動かさなくなってしまう患者さんが多くいらっしゃいます。病態を良くするためには動くことが必要で、普段から身体を動かしていると息苦しさは徐々に軽くなってきます。

● 肺炎◇◇◇日本人の三大死因の一つ。原因究明と感染予防が大切です◇◇◇

肺炎には大きく分けて2種類あります。肺の組織が細菌やウイルスなどの病原体に感染して炎症を起こす肺炎と、リウマチなどの膠原病・特殊な自己免疫疾患・薬物・毒物が原因で起こる間質性肺炎です(原因が分からないものは特発性間質性肺炎といいます)。基本的に間質性肺炎を治す方法はなく、どのように延命効果を得るかということが医学上の問題になります。まず医師が第一にすることはCT画像で肺の状態を確認し、患者さんの病歴・背景から肺炎の原因を探るということです。そして原因、症状、重症度に応じた治療を行います。原因が分からない場合は、病態に応じた治療になります。必要であれば適切な抗菌薬(抗生物質)を投与します。また肺炎は風邪などの感染症が加わった場合に一気に悪化しますので、感染予防が非常に重要になります。65歳以上の肺炎で最も頻度の高い病原菌は肺炎球菌です。これには5年間効果が持続するワクチンがありますが、インフルエンザのワクチンでも肺炎予防の効果があります(※ワクチンを接種すれば絶対に肺炎球菌肺炎に罹らないというわけではありません)。

◆誤嚥性肺炎…高齢者の方に多いのが誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が食道ではなく肺に侵入し、細菌が繁殖して炎症を起こす)で、重症化しやすい肺炎です。肺の病気は息苦しさ・咳・痰の3つの症状が代表的ですが、高齢者にはそのような症状が出ないことが多く、まず最初に食欲不振、胃のむかつきという消化器症状が出ます。それが4~5日続いて、その後に肺の症状が出るので、どうしても手遅れになってしまいます。来院時はほとんどの方が食事を摂ることのできない状態で、脱水症状になっています。ですからまず脱水を治してから病原体の治療をします。誤嚥性肺炎を完全に治すことは難しく、治癒しても再発してしまうことがあります。誤嚥そのものは脳の働きによるものなので、根本的には脳をどう活性化させるかという問題になります。

● 肺がん◇◇◇がんの中で死亡率1位。しかし医療の進歩により余命が伸びています◇◇◇

肺がんは組織別にみると、①小細胞がん ②大細胞がん ③腺がん ④扁平上皮がんの4種類あります。①小細胞がんは特殊なため、②③④の非小細胞がんと分けていて、治療法も異なります。①小細胞がんは進行がんで、見つかった時点で身体のあちこちに転移している可能性が高く、手術で完全に治すことはできません。よって抗がん剤による薬物療法が治療の中心となります。日本人に多いのは③腺がんと④扁平上皮がんです。この2つのがんは早期に発見すれば、完全に治すことが可能です。そのためには定期的な健診が必要です。

<検査>胸部単純写真だけでは直径20mm以下の小さながん(早期がん)を見つけることは難しいですから、CTを撮ることをお勧めします。CT画像から肺がんが疑われる場合には、さらに組織検査を行います。代表的なものは気管支鏡検査で、肺の中にファイバースコープを入れて、組織を直接見て診断します。

<治療法>主に外科療法(手術)、薬物療法(化学療法)、放射線療法があります。薬物療法はこの5年で目覚ましく進歩しました。従来は殺細胞性の抗がん剤が使用されてきましたが、分子標的抗がん剤(がんが増殖するルートを断ち切る薬)が登場し、最近では免疫チェックポイント阻害薬(身体の中のがんを殺すリンパ球の働きを活発にする、高額の薬)が開発されました。これはまだ適切な量が分かっていないため、試行錯誤で使用している状態です。当院が得意としている放射線治療もたいへん効果的です。放射線を当てることによってがん細胞だけを殺すことができるので、生体に害を与えず、副作用もほぼありません。放射線治療でがんを小さくしてから外科的手術をしたり、放射線治療と抗がん剤を組み合わせて延命効果をはかることもあります。さまざまな選択肢があるので各医療施設で工夫をしています。一昔前には「見つかったら余命は2~2.5年ほどしかない」と言われていた肺がんが、いまでは充分5年以上生存できるという確証が得られるようになったのです。がんの治療法は日々、世界中でめまぐるしく進歩しているので、最新の治療法を取り入れて実際に活かしていくのはなかなか難しいことですが、当院では今後も患者さんに最適な治療を提供できるよう努力してまいります。

「ちょっと聞きなれない臨床検査とは?」

臨床検査科 科長代行 馬場 正規 臨床検査技師

皆さんは、臨床検査という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。あまり聞きなれない言葉だと思いますが、病院で採血や検尿をしたことはあると思います。実はそれが臨床検査なのです。臨床検査には患者さんから採取した血液や尿、細胞などを調べる「検体検査」と、心電図や超音波検査など患者さんを直接調べる「生理機能検査」の2つに大きく分かれます。検査によって得られたデータは分析・評価を行い、迅速に報告しています。我々臨床検査技師は、医師が病気の診断や治療を行うための情報を提供しているのです。

当院では臨床検査技師約20名で業務を行っています。夜間、休日においても24時間体制を導入し、入院及び救急患者さんの緊急検査に対応しています。今回は、病院でどんな検査が行われているのか、皆さんにご紹介したいと思います。

◆検体検査について◆

血液検査
血清学的検査、免疫学的検査、血算検査などがあります。
血液中のさまざまな成分を自動測定機器を用いて、迅速に対応しています。
輸血検査
血液型検査、輸血適合試験(クロスマッチ)などがあります。 クロスマッチとは、患者さんと赤血球製剤との適合性を確認し、安全管理と副作用を防止するために実施する検査で、赤血球製剤の輸血の際に必ず行います。
ヘリコバクターピロリ菌検査
検査薬を飲み、吐き出された呼気を調べてピロリ菌に感染しているかを調べます。
胃カメラでピロリ菌が疑われた場合やピロリ菌除菌後の確認検査では保険が適応になります。
当院にはこの測定機器があるため検査は約30分ほどで結果がでます。
細菌検査
細菌培養、ウイルス検出検査などがあります。尿、便、痰、血液など、患者さんから採取された検査材料から、疾患の原因となっている菌を見つけ、また、その原因菌にどの抗菌薬が効くのかを調べます。
培養検査では検査材料を培地(栄養分を含んだ寒天)に塗り、増殖した菌の塊(コロニー)の様子を観察します。
病理検査
患者さんから採取された臓器や細胞から顕微鏡標本を作製し、その病態を解明する検査です。
主に病理組織診断と病理細胞診断の2つに分けられ、いずれも専門性の高い検査です。

◆生理機能検査について◆

心電図検査
心臓が拍動する時に生じる電気信号をキャッチし、心電計を通して波形として記録します。動悸・脈の乱れ・胸の痛みなど心臓の病気の診断を行うための検査で、不整脈・心筋梗塞・狭心症など、心臓の病気がわかります。 12誘導心電図、ホルター心電図、トレッドミル運動負荷試験、加算平均心電図などがあります。
肺機能検査
息切れ、呼吸困難、痰など肺の病気が考えられる時に行います。 機能的残気量、肺拡散能、クロージングボリュームなどを調べます。
聴力検査
標準純音聴力検査や、語音聴力検査があります。
脳波検査
脳はその活動に伴って常に微弱な電波を出し続けており、頭の表皮上における僅かな電位差となってあらわれます。それを頭部につけた電極で捉え、増幅し、波形として記録する検査です。 主にてんかんの検査として行われています。
超音波検査
腹部、心臓、体表(甲状腺、乳腺など)、血管(下肢静脈、下肢動脈、頸動脈など)に対して行います。放射線を使わないため、被ばくの心配がない検査です。
ABI検査
四肢の血圧を同時に測定することで、動脈硬化の程度を数値化します。 粥状硬化ができて血管の内腔が狭くなる「アテローム動脈硬化」の進行程度、血管の狭窄や閉塞などが推定できます。
PWV検査
脈波伝播速度検査とも言われ、心拍動の衝撃(波)が足首まで伝わる速さを測定します。 健康なやわらかい血管では脈がゆっくりと伝わり、動脈硬化が進んだ硬い血管では脈が速く伝わります。 この検査によって、ある程度の血管の老化の進行を示す「血管年齢」を割り出すことができます。 PWV検査の結果が速ければ速いほど、脳卒中や心筋梗塞などを起こすリスクが高くなると言われています。
Endo-PAT検査
反応性充血指数(RHI)から血管内皮機能を測定します。血管内皮機能をより正確に、より簡単に検査できる装置で、左右の指尖脈波を同時計測・比較することにより、血管内皮反応を評価・記録します。
PSG検査
今問題となっている睡眠時無呼吸症候群を疑う際に行う検査です。頭や顔、体の必要な部位にテープで電極を貼りつけ、実際に一晩眠りながら脳波や呼吸、眼球、筋肉の動きなどを記録し、睡眠の状態について調べます。
専門外来のご案内
大澤 美貴雄医師

喘息・アレルギー専門外来

呼吸器内科外来で気管支喘息の診断・治療と成人の食物アレルギーの診断を行っております。

呼吸器内科(非常勤) 新妻 知行(にいつま ともゆき) 先生

医学博士/日本内科学会認定内科医/日本アレルギー学会功労会員、専門医・指導医/
日本東洋医学会専門医/日本医師会認定産業医

専門外来の特長

喘息・アレルギー外来では成人気管支喘息また近年増加している慢性の咳症状(咳喘息など)の診断・治療を、また食物アレルギー(アナフィラキシー、口腔アレルギー症候群(OAS:Oral allergy syndrome)など)の診断と予防・治療を行っております。

主な検査

気管支喘息では採血検査による末梢血好酸球測定や特異的アレルゲンの同定(ダニ、イヌ、ネコ、カビ類など)、呼吸機能検査に加えて気道炎症の指標である呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)の経時的測定を行います。慢性の咳では胸部レントゲンや血液検査、呼吸機能検査に加え、気管支喘息との鑑別に呼気中一酸化窒素濃度測定も行います。

食物アレルギーは詳細な問診から推測して血液中の食物アレルゲン検査を行います。口腔アレルギー症候群のなかで感作アレルゲンが花粉の場合は花粉関連食物アレルギー症候群(PFSAまたはPFS:Pollen-food allergy syndrome)があり、関連花粉と同時に主に果物アレルゲンの検査をします。

主な治療

気管支喘息では主に吸入ステロイド薬/気管支拡張薬の配合剤で開始し、経過で吸入ステロイド薬の単剤に減量します。他に経口薬では抗ロイコトリエン薬や抗アレルギー薬などが併用されます。慢性咳嗽では中枢性鎮咳剤に加え、末梢性鎮咳剤(麦門冬湯)や気管支拡張薬など症例にあわせて投与します。食物アレルギーは原因食物の除去が基本となりますが、抗ヒスタミン薬の頓用やアナフィラキシー症例ではエピネフリン(エピペン)の自己注射薬を処方します。

患者さんへ

咳や息苦しさが寝る前や寝ている間に強くなり、ゼイゼイするのが気管支喘息の特徴です。家で飼育しているペットが原因のことがあります。特定の食べ物で皮膚のかゆみやじんま疹が出たり、果物を食べると口の中や喉がイガイガするのも食物アレルギーです。

診療日

◆金曜日 午後
外来診療予約専用TEL(通話料無料) 0800-800-6456【予約制】
外来診療担当表をご確認の上、ご予約をお取りいただいてからご来院下さい。

講座・イベントのご案内

医学健康講座

※時間…14:00~15:00/会場…STRホール(新百合ヶ丘総合病院3F、定員150名、先着順)
3月7日(水) 認知症と生活習慣病 ~認知症予防のための生活習慣の工夫~
※講座前12:00より、映画『しわ』の上映会を開催
神経内科 部長 矢﨑 俊二 先生
3月14日(水) ~よく眠れていますか?~ 春眠暁を覚えなくなるヒント 精神科 古賀 良彦 先生
3月16日(金) 認知症予防 ~健康長寿/食事のポイント~ 栄養管理科 安藤 美和 管理栄養士
3月30日(金) 介護保険制度と認知症 ~抱え込まずに相談しよう~
「認知症かな」と思った時からできること ~診断後の空白期間を考える~
医療福祉課 嶋﨑 晃 社会福祉士
栗木台地域包括支援センター 岡崎 寸見江

市民医学講演会

※時間…14:30~15:30
3月1日(木) 脳の健康チェック 
~認知症にならないために~
客員名誉院長 脳神経外科
堀 智勝 先生
小田急ホテル相模大野
8F相模野(定員120名)
3月6日(火) 膝の痛み 
~手術治療もいろいろあります!~
整形外科 部長
齋藤 泉 先生
町田ベストウエスタンレンブラント
ホテル B2F翡翠(定員120名)
3月22日(木) ~我慢しない!手足のしびれ・痛み~
脊椎脊髄の最新治療とは
脊椎脊髄末梢神経外科
医長 松岡 秀典 先生
町田ベストウエスタンレンブラント
ホテル B2F翡翠(定員120名)
3月27日(火) からだにやさしいがん治療、治せなかったガンに挑む
~PET-CT診断とサイバーナイフの放射線治療~
放射線治療科 サイバー
ナイフ治療部 部長
宮崎 紳一郎 先生
町田ベストウエスタンレンブラント
ホテル B2F翡翠(定員120名)

※ 講座の講師及び演題は予告なしに変更になる場合がございます。

2017年1月の救急車受け入れ台数は751台でした。