小田 誠先生 動画インタビュー|ドクターインタビュー

2018年7月5日掲載

今回のドクターインタビューは、当院呼吸器センター センター長 呼吸器外科 統括部長 小田 誠先生にお話を伺いました。

インタビュー内容

  1. 呼吸器外科のご紹介
  2. これまでのご経歴
  3. 体に優しい低侵襲手術について
  4. 大切にしていること
  5. 今後の抱負と皆さまへのメッセージ

特別インタビュー

当院の呼吸器外科について

石川県の金沢大学を卒業後、金沢大学病院に勤務しておりました。その間、1992年から1年3か月の間、ドイツのハイデルベルク大学胸部外科病院でありとあらゆる臨床手術を、日曜日から金曜日まで日々手術室にこもって朝から晩まで学びました。2002年にはアメリカでロボット支援手術を学びました。ロボット支援手術では、日本での先駆けとして2010年に縦隔腫瘍、2011年に肺がん切除に対する手術を行いました。2006年からは金沢大学病院臨床教授として後輩の指導にもあたってまいりました。その後は、ロボット心臓外科手術を得意とするニューハート・ワタナベ国際病院の院長として携わり、2016年から新百合ヶ丘総合病院にお世話になって今に至ります。

胸腔鏡を用いた体にやさしい低侵襲手術について

肺の手術は肋骨の間から胸の中に入る必要があり、肋間神経が障害されるので一番痛い手術に分類されています。私が医者になりたての頃は、肋骨を折って30cmほど開胸していました。痛みが残り、社会復帰も遅かったです。しかし低侵襲の胸腔鏡手術が発展したことで、疼痛を最小限に抑え、創もほとんど残らないようになりました。今では、1肋間にだけポートあるいは切開創をおいた「単孔式胸腔鏡手術」や、肋間より下のお腹の部分に主たる切開創を設け、肋骨の間には3mmの細いポートだけを入れる「助弓下経横隔膜手術」といった最先端の手術も行っております。これらの手術により、約9割の患者さんが術後2日目に退院されています。

近々にロボット支援下手術も再開する予定です。

診療・手術にあたって大切にしていること

私のモットーは「気診心診」です。いつも患者さんの気持ち・心になって考える姿勢でおります。例えば、手術をすれば完治が期待できる患者さんでも、患者さんご本人やご家族が手術を拒否された場合には、他の治療方法をご提案することもあります。患者さん一人一人の生き方・考え方を尊重し、それに沿って診療にあたります。

当院呼吸器外科で一番多い、肺がんについて

肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞ががん化したものです。進行するにつれて増殖し、血液やリンパの流れにのって広がっていきます。肺がんの主な症状には、咳(1ヶ月以上空咳が続く)、呼吸困難(息切れ、息苦しさ)、痰(量が増えて色が濃くなる)、血痰(血の混じった痰)、飲み込みにくさ、胸の痛み、などがあります。肺がんには「小細胞がん」と「非小細胞がん」があり、さらに「非小細胞がん」を「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」の3種類に分類しています。肺がんは、大きく分けて肺門部と肺野部に発生します。肺門部とは肺の入口の気管支のことで、扁平上皮がんが多く、肺野部と呼ばれる肺の奥にできるのは腺がんが大部分です。

肺がんの治療法

治療法は、肺がんの進行度によって変わります。病期分類としては0・1・2・3・4期に分かれており、手術対象者は0期、1期、2期の患者さんが主になります。無症状で、健康診断で見つかる方が大多数です。ただし、「肺門部がん」という気管支から近いところにできるがんの場合は血痰が出るという症状がありますので、早めに受診していただければと思います。

肺は、右の肺が上葉、中葉、下葉の3つ、左の肺が上葉、下葉の2つに分かれています。今日でも、例えば下葉にがんができると、下葉すべてを摘出するのが肺がん手術の原則です。しかし、CT検査などで小型の肺がんも早期発見されるようになり、これらの患者さんには部分切除や区域切除のように、切除範囲を最小限にとどめる手術も行っております。小さいうちに肺がんが見つかれば、低侵襲の胸腔鏡手術により、小さな創で手術ができます。理想としては痛みの少ない創の小さな手術ですが、一番大切なことは疾患を治すことなので、患者さんに応じて胸腔鏡か開胸かを決めています。がんが進行した場合だと、手術後に抗がん剤をしたり、先に抗がん剤と放射線照射治療をしてから手術を行う場合もあります。

気胸について

  • 小田 誠医師
  • 気胸とは、肺に嚢胞という小さい風船のようなものができ、それが破れて胸の中に空気が溜まった状態です。息を吸っても肺が広がりにくく、呼吸がうまくできません。軽度であればそのまま経過を観察しますが、肺がしぼんでいる程度が大きければ、ドレーンという管を胸の中に入れたり、胸腔鏡手術を行います。

縦隔腫瘍について

縦隔とは左右の肺の間に位置する部分のことを指しており、心臓、大血管、気管、食道、胸腺などの臓器があります。縦隔腫瘍とは、これらの縦隔内臓器に発生した腫瘍の総称です。がん、胸腺腫、嚢胞性肺疾患など、さまざまです。発生年齢は小児から高齢者まで幅広く、悪性も良性もあります。大部分の疾患は胸腔鏡手術が可能なので、大きな腫瘍、複雑な腫瘍でなければ、3mmの創2ヶ所と5mmの創1ヶ所から胸腔鏡手術を行っております。今年からは、保険診療となったロボット支援手術も施行可能ですが、多くの腫瘍に対して胸腔鏡手術の方がより小さな創で、短時間で行うことができます。

今後の抱負

私は全国の若い外科医に手術手技を教えながら、海外の学会にも積極的に出席し、常に新しい医療に目を向けています。イタリア、ドイツの知人と様々な情報交換を続けておりますし、中華人民共和国衛生部中日友好病院の客員教授、フィリピン低侵襲胸部外科学会名誉フェローも務めております。世界的視野に立った最高水準・最先端の医療を追求し、それを地域の皆様の診療に活かしていきたいと考えています。

ホームページをご覧の皆様へのメッセージ

私の夢としている「創のない・痛みのない・笑顔で退院して早期社会復帰できる」手術を目指して、今後も精進していきます。外科医として皆様の人生のお役に立てれば幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。