食事・運動・薬物療法|糖尿病・内分泌代謝内科
食事療法について
糖尿病治療の中で基本となる食事療法のサポートを致します。 医師の指示のもと、患者さん1人1人に適切な栄養量で食事療法に取り組めるようにわかりやすく説明致します。
『食事療法』と聞くと、「食べちゃダメ」「我慢」といったイメージがあるかもしれませんが、「食べてはいけないものはありません」。自分で考えながら、美味しく・楽しく食事療法が継続できるようしていきましょう。
外来・入院での関わり
外来
栄養指導:糖尿病食事療法の基本についてご説明します。
入院
・昼食時は、デイルームで教育入院中の患者さんと一緒に食事をして情報交換
・入院中の食事は糖尿病食品交換表の分類を用いて食事記録
・集団栄養指導:糖尿病食品交換表の活用方法について
・必要に応じて、入院中に個別栄養指導も実施
退院
外来栄養指導:退院後の食事療法をサポートいたします。
糖尿病食事療法 食品交換表
運動療法について
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運動療法は、食事療法、薬物療法と並んで、糖尿病治療の有力な手段です。とくに、日本人の糖尿病の 95% を占める、2型糖尿病の患者さんで、血糖コントロールが安定している人の場合は、食事療法とともに運動療法を行うと、血糖が下がるだけでなく、糖尿病のさまざまな症状が改善され、さらには、動脈硬化の予防、老化防止といった点でも効果があることが実証されています。 しかし、進行した合併症がある時には、運動がかえって病状を悪化させることもあります。
教育入院で入院された方には、はじめに運動療法の講義を行い、運動の必要性や効果、具体的な運動内容について知識を深めていきます。
実際に運動を始めるにあたり、個別に体力測定を行い、一人一人に合わせた運動量や負荷量を設定します。有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングや上肢・下肢・体幹ストレッチなども合わせて行います。また、必要に応じて自宅退院後の生活指導、自主トレーニング指導も行います。
薬物療法について
糖尿病の薬物療法は食事療法、運動療法に次いで必要なものです。しかしながら、昨今の糖尿病治療薬の進歩は目覚ましく、これまでも複雑であったものがさらに複雑になってきています。とりわけ、薬の種類、服用タイミング、薬ごとの効果の違い、低血糖への注意点、注射薬での問題点などについて理解することは難しいです。
そこで、当院の教育入院プログラムでは金曜日の午前枠で糖尿病の薬物療法に用いられる薬についてより理解していただくために、できるだけわかりやすく説明することで薬について気を付けていただきたいこと、低血糖などについてご説明しています。1時間という時間のなかですべてを理解していただくことは難しいですが、患者さん自身のためにも是非、教育入院プログラムに参加し、薬について薬剤師とともに理解を深めてみてください。
薬物療法とは
通常、血糖値が高い方には生活習慣の改善が促されます。その中には食生活の改善によるエネルギー制限やバランスの取れた食事の摂取などが挙げられ、さらには毎日の運動量の増加を指導されたりします。
これらに取り組んで血糖値の改善がみられない、あるいは血糖値の低下が鈍いような方を対象として薬を使って血糖値を下げることになります。
この薬は経口血糖降下薬と注射薬の大きく2つに分類することができます。
糖尿病治療薬の分類
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①経口血糖降下薬
- 速効型インスリン分泌促進薬
- SU薬
- α-グルコシダーゼ阻害薬
- ビグアナイド薬
- インスリン抵抗性改善薬
- DPP-4阻害薬
- SGLT2阻害薬
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②注射薬
- インスリン
- GLP-1作動薬
①経口血糖降下薬
1)SU薬
働く場所 | 膵臓。 |
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作用 | インスリンの分泌が少なくなっている方のインスリン分泌を促します。 |
作用する時間帯 | 空腹時・食後にわたって1日の血糖値を全体的に下げます。 |
低血糖について | SU薬は血糖降下作用が比較的強く、空腹時などの血糖値が低い時間帯に薬の作用が強く現れた場合に低血糖が起きることがあります。 |
その他の副作用や注意点 | 肥満を促す傾向があるので、食事療法の徹底が必要です。 |
特徴 | 古くから使われてきた薬で、作用の持続時間や効き目の強弱などにより多くの種類があります。 |
2)速効型インスリン分泌促進薬
働く場所 | 膵臓。 |
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作用 | SU薬と同じようにインスリンの分泌が少なくなっている方のインスリン分泌を促します。 |
作用する時間帯 | 主に服用直後の血糖値を下げるので、α-グルコシダーゼ阻害薬と同じように食後高血糖の改善を目的に使われます。 |
低血糖について | インスリン分泌を増やすので、服用したのに食事をとらずにいたりすると低血糖が起こり得ます。 |
その他の副作用や注意点 | 食事の‘直前’に服用しないと効果がありません。 |
特徴 | 比較的軽症の糖尿病患者さんでは、食後のインスリン分泌の‘量’は足りていても分泌の‘タイミング’が遅いため、食後高血糖になっていることがあります。そのような場合にこの薬を服用すると、インスリン分泌のタイミングが早くなり、食後高血糖が改善されます。 |
3)α-グルコシダーゼ阻害薬
働く場所 | 小腸。 |
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作用 |
食事からのブドウ糖の吸収を遅らせ、食後高血糖を是正します。 |
作用する時間帯 | 主に服用直後の食後血糖値を下げます。このため食後高血糖だけが目立つ比較的軽症の患者さんや、他の薬で空腹時の血糖値は低くなっているのに食後高血糖がある患者さんへの併用薬として使われます。 |
低血糖について | インスリンの分泌量は増やさないのでほとんど心配いりません。ただしSU薬などとの併用では低血糖が起こり得ます。その場合、砂糖ではなくブドウ糖の服用が必要です(砂糖では薬がその分解・吸収を邪魔するので、低血糖からなかなか回復しません)。 |
その他の副作用や注意点 | 食事の‘直前’に服用しないと効果がありません。食事の吸収量を減らすわけではないので、食事療法を守る必要があります。 |
特徴 | インスリンの作用とは関係ない部分で効果を発揮するので、インスリン依存状態の患者さん(主に1型糖尿病の患者さん)も食後高血糖改善効果を得られます。 |
4)ビグアナイド薬
働く場所 | 肝臓、筋肉、小腸。 |
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作用 |
ブドウ糖の筋肉等での消費を高めます。 |
作用する時間帯 | 1日にわたり高血糖を全体的に改善します。 |
低血糖について | インスリンの分泌量は増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど心配いりません。 |
その他の副作用や注意点 | 一時期、乳酸アシドーシスという副作用の心配からほとんど使われない時期がありましたが、今では見直されています。ただし、からだが脱水になると乳酸アシドーシスが起こりやすいので、下痢や発熱したとき、夏場、または高齢の方は、特に注意して医師の指示を守り、服用・対処してください。 |
特徴 | 古くからある薬なので、注意点が比較的よくわかっています。 |
5)インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬)
働く場所 | 肝臓、筋肉、内臓脂肪。 |
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作用 | インスリンの効きが悪くなっている方のインスリンの効きを改善します。 |
作用する時間帯 | 1日にわたり高血糖を全体的に改善します。 |
低血糖について | インスリンの分泌量は増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど心配いりません。 |
その他の副作用や注意点 | 浮腫〈ふしゅ〉(むくみ)が現れることがあります。骨粗鬆症〈こつそしょうしょう〉や膀胱〈ぼうこう〉がんが増えるとの報告もありますが、その危険性は少ないようです。 |
特徴 | 肥満、特におなかが出ている内臓脂肪型肥満の患者さんはインスリン抵抗性が強いことが多いため、この薬が処方されることがよくあります。 |
6)DPP-4阻害薬
働く場所 | 十二指腸や小腸。 |
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作用 | インスリン分泌を促す働きのあるインクレチンの分解を促進する酵素を阻害します。 |
作用する時間帯 | 1日にわたり高血糖を全体的に改善しますが、食後の高血糖時に、より強く作用します。 |
低血糖について | 血糖値が高くなければインスリン分泌を増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど心配いりません。 |
その他の副作用や注意点 | 目立った副作用の報告は今のところありませんが、比較的新しい薬なので、未知の副作用が現れる可能性を否定はできません。これは、どんな新薬にも該当する避けられない点です。 |
特徴 | インスリン分泌を増やすだけでなく、グルカゴン分泌を抑制するのはこの薬だけです。 |
7)SGLT2阻害薬
働く場所 | 腎臓。 |
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作用 | 血液中のブドウ糖を尿中に排泄させます。 |
作用する時間帯 | 1日にわたり高血糖を全体的に改善し、食後などの高血糖時には尿糖がより多く排泄されます。 |
低血糖について | インスリンの分泌量は増やさないので、SU薬などとの併用でなければほとんど起こりません。 |
その他の副作用や注意点 | 新しい薬なので副作用について十分にわかっていない面もありますが、理論的には尿糖が増える影響で尿路感染症になりやすくなる可能性があります。また、尿糖の排泄に伴い脱水になりやすくなります。その影響で血液が濃くなって脳梗塞や心筋梗塞が増えたり、高浸透圧性昏睡やケトアシドーシスという急性合併症が起きやすくなる可能性が考えられます。そのため、脱水になりやすい下痢や発熱時、夏場、高齢の方は、特に注意して医師の指示を守り、服用・対処してください。 |
特徴 | インスリンの作用とは関係ない部分で効果を発揮する点が一つの特徴です。また、からだのエネルギー源である血糖が減る分、体重が減る傾向があります。これは肥満糖尿病の患者さんには好ましい変化ですが、反面、筋肉が減ったり栄養状態が悪化することもあるので、注意点とも言えます。 |
②注射薬
1)インスリン
・・・インスリン分泌の少ない方やインスリン抵抗性の強い方へ外部からインスリンを補充します。
2)GLP-1作動薬
・・・インスリン分泌を促す働きのあるインクレチンを外部から補充することで高血糖を是正します。
これらの薬は正しい知識を持って使用する上ではよい効果が期待できます。しかしながら、薬の飲み方やインスリンの使い方、低血糖への対処など、正確な知識を持ち合わせていないと問題が生じるケースもあります。
そこで、当院における『糖尿病教育入院の薬物療法についてのプログラム』ではこのような点について詳しくご説明できるような内容構成としています。この教室を有意義な時間としていただけるよう努力しています。