2017年11月号 薬剤師コラム

インフルエンザの治療薬

薬剤科 成井 亮

令和となり初めて新年を迎えましたが、皆様体調を崩していないでしょうか。今回は、近年流行するのがもはや当たり前のようになりつつあるインフルエンザについてお話していきたいと思います。

インフルエンザとは

  • インフルエンザの治療薬
    ※インフルエンザの顕微鏡画像
  • インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症です。世界各地で流行が起こる疾患ですが、季節性インフルエンザは日本では毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加、4~5月にかけて減少していくパターンを示します。ただ近年では夏季に患者が発生することも珍しくありません。多数の患者発生と高齢者の超過死亡(インフルエンザが流行したことによって総死亡がどの程度増加したかを示す推定値)、インフルエンザ脳症に代表される乳幼児における合併症等がみられています。

インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3つの型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。C型は、一度免疫を獲得すると終生その免疫が持続すると考えられています。感染後は1~3日程度の潜伏期間の後、突然の発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、咳、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状がこれに続き、約1週間で軽快します。しかしながら、高度発熱を伴わない場合もあるため注意が必要です。主な合併症として肺炎と脳症があげられ、重症化すれば死亡に至ることもあります。

表1.インフルエンザの種類と症状比較

流行性 症状の強さ備考
インフルエンザA 中等度~高度 ウイルスの多彩な変異により毎年流行が起こる
インフルエンザB 軽度~中等度 下痢・腹痛の症状が多い
インフルエンザC × 軽微 罹患は4歳以下が多い。ほとんどの大人が免疫あり

予防

インフルエンザは予防が重要な病気と考えられています。具体的な予防としては、流行前のワクチン接種、咳エチケット、外出後の手洗い・うがい、不要な人混み外出を控えることなどが挙げられます。

インフルエンザワクチンの接種は特に有効な方法ですが、ワクチンによってインフルエンザに全くかからなくなるわけではありません。ワクチンの目的としては、感染後の発症の可能性を低減させ、発症した場合の重症化を防ぐ点にあります。特に高齢者では重症化・死亡へ進展の可能性が高いため、①65歳以上の方と②60~64歳で特定の疾患・障害がある方は定期予防接種の対象となっています。予防接種の接種回数については、13歳以上の方は1回接種が原則です。

インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行が予測されると判断されたウイルス株を用いて製造されています。2014まではA型2株、B型1株の3種混合型でしたが、2015-2016年よりA型2株、B型2株の4種混合ワクチンが使用されています。選定されるワクチン株は毎年変わるため、インフルエンザワクチンの接種は毎年行うことが良いと考えられます。また最近では、ある種の乳酸菌の継続的摂取でインフルエンザワクチンによる効果が高まるという報告もあります。


ジェネリック医薬品(後発医薬品)に変更できない!?

※厚労省のインフルエンザ予防啓発ポスター

【注釈】

※感染とは微生物が体内に侵入し、寄生・増殖した状態となること

※発症とは感染を起こした結果、様々な症状が起こること

治療

早期の治療としては抗インフルエンザ薬の投与が一番に挙げられます。その他は対症療法として、水分補給による脱水の改善や解熱鎮痛薬の使用等があります。

現在、使用されている代表的な抗ウイルス薬を下記に示します。抗インフルエンザ薬は

タミフルに関しては小児での異常行動が一時問題となりましたが、こちらは薬剤による副作用の可能性の他、ウイルスが増殖するまでの発症後48時間以内に使用しなれば、効果は乏しいと言われています。症状からインフルエンザを疑った場合には早期の受診が重要です。

インフルエンザの治療薬はノイラミニダーゼ阻害薬、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬の2種類に分かれます。種類としては内服薬、吸入薬、注射薬があります。

基本的には1剤での治療となります。上記のノイラミニダーゼ阻害薬、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬の剤は理論的には併用可能ではありますが、現時点での併用治療の意義は低いとされています。

表2. インフルエンザの治療薬一覧

製品名 投与経路 用法・用量
(成人)
用法・用量
(小児)
ノイラミニダーゼ阻害薬
タミフル®
カプセル
顆粒
治療:75㎎1日2回(5日間)
予防:75㎎1日1回(7~10日間)
幼少時:1回2mg/kg
新生児、乳児:1回3㎎/kg
1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与。ただし、1回最高用量は75mgまで。
リレンザ®
吸入 1回10㎎(5㎎ブリスターを2ブリスター)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を用いて吸入。
ラピアクタ®
点滴静注 300㎎を15分以上かけて単回点滴静注。
重症化のおそれのある患者:600㎎を15分以上かけて単回点滴静注、症状に応じて連日反復投与可能。年齢、症状に応じて適宜減量。
1日1回 10mg/kgを15分以上かけて単回点滴静注。症状に応じて連日反復投与可能。投与量上限は、1回600㎎まで。
イナビル®
吸入 40mgを単回吸入投与(2容器)。 10歳未満:20mgを単回吸入投与(1容器)。
10歳以上:40mgを単回吸入投与(2容器)。
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬
ゾフルーザ®
錠剤
顆粒
40㎎を単回投与(20㎎2錠/10㎎顆粒4包)。 12歳未満
40kg以上:40㎎
20-40kg未満:20㎎
10-20kg未満:10㎎

上記のように多種の薬剤がありますが、年齢や重症度、投与経路の点を考慮して薬剤が選択されます。

タミフルに関しては小児での異常行動が一時問題となりましたが、こちらは薬剤による副作用の可能性の他、インフルエンザ自体による症状の可能性もあることが示唆されています。治療薬開始の有無に関わらず、異常行動への注意は必要と思われます。

また2018年に発売した新薬ゾフルーザに関しては、すでに薬剤耐性化の問題が発生しており、インフルエンザA型H3N2株の9.7%がゾフルーザ耐性であるとの報告があります(他剤にも一部1%程度の耐性化の報告あり)。特に12歳未満の小児での耐性率が高いと言われています。12歳未満でゾフルーザが処方された場合には、一度医師・薬剤師への確認も手段の一つです。

抗インフルエンザウィルス薬耐性検出状況

まとめ

  • ① 予防 まずは流行期前のワクチン接種が大切!流行期の外出に注意、マスクの使用も予防に
  • ② インフルエンザかも? 症状からインフルエンザ感染疑いがあれば早期に受診!家族や職場への拡散を防ぐ意味でも重要!
  • ③ 治療抗インフルエンザ薬の投与!薬剤耐性化問題もあるため、症状改善傾向が乏しければ再度受診を!

【参考】
厚生労働省 インフルエンザ総合ページ抜粋
NIID 国立感染症研究所
一般社団法人日本感染症学会
東京都福祉保健局