2017年7月号

食中毒

内科/原田裕子

暑い毎日、さっぱりしたものが嬉しい季節です。
サラダやお刺身など、冷たいものが食卓に上がることが多くなりますね。台所も暑くて、長時間火を使うのは避けたくなりますが、加熱時間を短縮したりしていませんか?食材によっては、しっかり水洗いをする、しっかり火を通すなど、調理に手間をかけないと食中毒の原因となります。また、冷蔵庫に保存しておいたつもりでも、冷蔵庫内で細菌が繁殖しやすく、食材が傷みやすいことにも注意が必要です。冷凍庫に食材を入れても、細菌は死滅せず、活動が休止するだけですので、解凍すると細菌は繁殖を開始します。夏は細菌による食中毒が多い時期。今日は食中毒について解説します。

1. 食中毒の種類

食中毒の原因は細菌の他にウイルス、カビ、寄生虫、自然毒、化学物質などがあります。夏に
多いのは細菌性食中毒です。細菌性食中毒は細菌が繁殖した食物を摂取することにことによる「感染型」と、食物内で繁殖した細菌が毒素を産生し、それを摂取することによる「毒素型」に分けられます。「感染型」の代表はサルモネラ菌や病原性大腸菌です。「毒素型」の代表は黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌です。
 サルモネラ菌は卵(とくに殻の部分)や生の鶏肉、病原性大腸菌は生野菜、黄色ブドウ球菌は(人間の手にいることが多いので)握りずしやおにぎりなど、ボツリヌス菌は蜂蜜に潜んでいることが多いと言われています。

2. 食中毒の症状

腹痛、嘔吐、下痢が代表的な症状です。発熱がみられることもあります。フグ毒、ボツリヌス毒素などの神経毒は、呼吸停止をきたすことがあります。

3. 予防

厚生労働省では、食中毒予防のために「3つの原則、6つのポイント」を提唱しています。
3つの原則とは、細菌を食物に 「つけない」、食物に付着した細菌を「増やさない」、食物や
調理器具に付着した細菌を 「やっつける」ことです。ウイルスの場合は、食物中で増えませんので「増やさない」は該当しませんが、代わりにウイルスを食物や調理器具に「ひろげない」ことが大事です。

6つのポイントは、「買い物」「家庭での保存」「下準備」「調理」「食事」「残った食品」です。厚生労働省では、これら6つについてそれぞれ細かく注意点を挙げています。主な点は、消費期限を確認すること・冷蔵庫や冷凍庫に詰め込みすぎないこと・生ものを扱うときはこまめに手を洗うこと・野菜は流水でよく洗うこと・冷凍食品の解凍は電子レンジを利用し、自然
解凍は避けること・タオルや調理器具を熱湯で殺菌すること・肉や魚は中心部を75℃で1分以上加熱すること・残り物を温めなおすときは十分に加熱すること・時間の経ちすぎた残り物は思い切って捨てること、です。

4. 処置と治療

「食中毒かな」と思ったら、まず慌てないこと。症状が軽い吐き気や便がゆるいなどの場合は、よく水分をとって様子を見ても大丈夫でしょう。嘔吐がひどく水も飲めない場合・腹痛がひどい場合・吐物や便に血が混ざる場合・呼吸が苦しい場合は病院を受診してください。

検査としては血液検査や腹部レントゲン検査が行われ、重症度により入院治療か外来治療かが決定されます。症状の原因が細菌と推定される場合は抗生物質が使用されますが、やみくもに抗生物質を投与すると状態が悪化することもありますので、慎重に決定されます。治療の基本は水分補給で、水が飲めない場合は点滴が必要となります。嘔気が強ければ制吐剤、下痢がひどければ整腸剤が処方されます。下痢止めは症状を悪化させることがありますので、あまりに頻回の下痢で脱水が懸念される場合にのみ処方されます。

食中毒は危険なものもありますが、たいていは外来治療で治ります。重症な食中毒を起こさないようにするためには、予防が最も大切です。正しい知識を身につけて、楽しく夏を乗り切りましょう。