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2017年12月号

インフルエンザの予防、治療

薬剤科 副主任心得 荒屋 世一

2017年も残りわずかとなりました。季節も冬を迎え、体調を崩してなどいないでしょうか。この時期になると気になることの一つに、毎年流行となるインフルエンザを思い浮かべる方も多いかと思います。今回はそのインフルエンザについてのお話です。

インフルエンザとは

インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられています。日本でも毎年冬季を中心に多数の患者発生と高齢者の超過死亡(インフルエンザが流行したことによって総死亡がどの程度増加したかを示す推定値)、インフルエンザ脳症に代表される乳幼児における合併症等がみられています。

インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。突然の発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、せき、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状がこれに続き、約1週間で軽快します。主な合併症として肺炎と脳症があげられます。通常のかぜ症候群とは異なることが重要です。

毎年流行することや、去年かかったのにまた今年もかかることがあるのは、インフルエンザウイルスが変異(※1)しやすく、その変異したインフルエンザウイルスに感染しているからです。なお、C型は、1度かかると終生その免疫が持続すると考えられています。

多くは幼児期にかかり、症状も軽いため普通の風邪と勘違いされる場合もあります。

※1変異…同種の生物個体間に形態的、生理的な差異が現れること。

インフルエンザの予防

インフルエンザは感染の予防がとても重要な病気と考えられています。

予防する有効な方法としては、以下が挙げられます。

  • ① 流行前のワクチン接種
  • ② 飛沫感染対策としての咳エチケット
  • ③ 外出後の手洗い等
  • ④ 適度な湿度の保持
  • ⑤ 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
  • ⑥ 人混みや繁華街への外出を控える

この中で、①のインフルエンザワクチンの接種は特に有効な方法と考えられていますが、ワクチンを接種したからインフルエンザにかからないと勘違いされている方が多くいます。インフルエンザワクチンを接種したからといって、必ずインフルエンザにかからないというわけではありません。感染(※2)後に発症(※3)する可能性を低減させ、発症した場合の重症化防止に有効と報告されています。ワクチン接種の最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。

インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されると判断されたウイルス(2015年よりA型2株、B型2株の4種混合。2014年以前はA型2株、B型1株の3種混合。)を用いて製造されています。このため、昨年インフルエンザワクチンの接種を受けた方であっても、今年のインフルエンザワクチンの接種を検討していただく方が良い、と考えられます。

※2感染…病原体が体内に侵入すること。
 ※3発症…症状があらわれること。

インフルエンザの治療

インフルエンザにかからないように予防をしていても、インフルエンザに感染してしまうことも少なくありません。具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう。受診後の治療としては以下が挙げられます。

① 対症療法

自宅での安静加療を原則とします。水分補給や食事摂取ができない時などは、点滴による補液が必要となります。

② 抗インフルエンザ薬

現在、市販されている代表的な抗ウイルス薬を表1に示しています。発症後48時間以内に使用しなければ、効果はないといわれており早めの受診が勧められます。

その理由は、インフルエンザ治療薬の多くは増殖したウイルスを殺すのではなく、増殖する段階を抑える働きがあるため、ウイルスが増え切った状態では効果が乏しくなります。また、治療薬を使用したからといって早く学校や仕事に復帰できるわけではありません。高熱や体の痛みから解放される時間が短縮されるというメリットはありますが、後述の【インフルエンザを周りの人にうつさないために】のように、周りに移さないよう注意が必要です。

現在インフルエンザの治療薬は内服薬、吸入薬のほか注射薬も発売されています。

表1. 代表的なインフルエンザの治療薬一覧
製品名 投与経路 用法・容量
(成人)
用法・容量
(小児)
タミフル® 経口 75㎎1日2回
(5日間)
幼少時:1回2mg/kg
新生児、乳児:1回3㎎/kg
1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する。ただし、1回最高用量はオセルタミビルとして75mgとする。
リレンザ® 吸入 1回10㎎(5㎎ブリスターを2ブリスター)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を用いて吸入する。
ラピアクタ® 点滴静注 通常、成人にはペラミビルとして300㎎を15分以上かけて単回点滴静注する。合併症等により重症化するおそれのある患者には、1日1回600㎎を15分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。なお、年齢、症状に応じて適宜減量する。 通常、ペラミビルとして1日1回 10mg/kgを15分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。投与量の上限は、1回量として600㎎までとする。
イナビル® 吸入 40mgを単回吸入投与する(2容器)。 10歳未満の場合、20mgを単回吸入投与する(1容器)。10歳以上の場合、40mgを単回吸入投与する(2容器)。

インフルエンザを周りの人にうつさないために

インフルエンザを発症した幼児や学生に関しては学校保健安全法において、発症した後(発熱の翌日を1日目として)5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで出席停止期間と定められています。

しかし、社会人に対してはインフルエンザ感染に関する、出勤停止などの共通の決まり事はありません。そのため、会社によって出勤停止の規則は異なりますが、多くは、学校保健安全法に基づいて、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで出勤停止」と定めています。

自らが感染した場合は、咳やくしゃみによって飛び散る飛沫などによって周囲へ感染を広げないよう自宅で療養することも重要なことと言えます。

  • 【参考】
    • 厚生労働省
    • 学校保健安全法
    • NIID 国立感染症研究所
    • 一般社団法人日本感染症学会
    • 一般社団法人日本呼吸器学会